無添加
朝の6時。
この前までは真っ暗で何も見えなかったのに、
寝むそうな表情をした景色がぼんやりと姿を見せ、
頬に触れる空気も、春色を帯びて和らいでいます。
「ボンジョールノ、キヨミ」
「ボンジョールノ、ルイージ。元気?
後でバールに立ち寄って、朝食しましょうね!」
オリーブオイルの作り手、ファンチュッリ農園では、数年前から石鹸やボディークリームも手掛けるようになりました。
今から、彼らのオリーブオイルを使用して石鹸を作る工房に向け、出発!10時頃には到着するでしょう。
「ねえ、どうして、この工房を選んだの?
もう少し、近場になかったのかしら?」
「うん。石鹸の工房を選ぶまで、1年かかったよ。
最初に、自然派の石鹸を手掛ける工房のリストを洗い出したんだ。会社のパンフレットに目を通し、また、その会社の評判を調べながら、どんどん、選択を狭めていった。ビオ辞典、というのがある。そこには、市場に出回っている製品の成分が掲載されている。それを見ては、また絞りこみ・・・最終的に3社が残った。今度は作り手を呼んで、じっくりと話を聞いてみた。
話を聞くと、やはり、化学成分を使用して工場的に仕上げている様子が見え隠れするところもあったので、削除。最後に残ったのが、今から僕たちが向かう工房なのさ」
トスカーナの丘陵を超え、雪化粧をした山間部に入り、
暫く走行して平原になると、小さな街が現れました。
赤信号で停車した場所には、バールがあります。
「ねえ、いっそのこと、ここに入りましょう!」
「うん、いいタイミングだよ! 今、ワゴン車がこの店に駐車した。出来たてのパンが運ばれたのさ!」
イタリア人は、徹底的に甘い朝食に口説かれて一日をスタートします。
ドーナツ、クリームパン、チョコレートパン、蜂蜜がたっぷり詰まったものや、砂糖がたっぷりとまぶされたパンなど・・・とにかく甘いのです。
「私は、コレ!」と指をさし、
紙に包まれたパンを受け取ると、まだ温かい!
大通りでもないのに、パンの到着を知っているのか、
どんどん地元の人が入ってくる。
カウンターの男性は、お客の名前を呼びながら挨拶を交わしているので、賑わいが生まれます。
情報が氾濫する中、少しでも得をしようと、
「特別に美味しい」評判のお店に行ってみるが、
情報は堪能したものの、実際、味と雰囲気は期待したほどでもない時があります。
それに比べ、「ただ、人が集まってくる」
という現実的なお店に居るのは、とても居心地が良い。
さて、お腹にエネルギーを補給をしたところで、
目的地に向けて出発。
車内で話をし続けていたせいか、あっという間に現場に到着し、29歳の工房のオーナーは、初対面とは思えぬ普段着の笑顔で迎えてくれました。
「無添加石鹸づくりを始めたきっかけは何ですか?」
「昔から、手で何かを作ることが好きだったんです。
パンとか、パスタとか・・・自然のものを使ってね」
この日、私達が受け取った石鹸は100個。
そしてルイージは、次の石鹸用に、シエナから持参したオリーブオイルを工房に運びこみました。
「ねえ、何年に収穫したオリーブオイルなの?」
「キヨミ、何言ってるんだよ!
2012年。この前、絞ったものさ!」
「え~、食用として高級なのに!
新鮮なうちから、石鹸に使っちゃうの?!」
パッケージに綴る情報やイメージラベルは、何とでも作れるし、それをお客様に伝える表現も、何とでも創意工夫が出来る。
しかし、イタリア現地にいる以上、皆様に
「美味しそうな情報」を味わっていただくのではなく、
「本当に良いものだから、自然に人が集まってくる」
という、そんな商品に触れていただく機会を提供していきたいです。
最近、ブログの更新まで間隔が空いてしまいがちですね。
反省、反省!
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