Made in Italy
日本からいらしたお客様をワイナリーにご案内しました。
本来、私とパトリッツィオがお連れするのは小さな農園なのですが、今回は、お客様からワイナリーのご指名があり、キャンティクラッシコ地区にある、大手・有名ワイナリーを訪れます。
車窓の眺とは対象的に、館内はとても近代的。
案内係の女性に従って、ショップから事務所脇を通り、
発酵が行われる部屋へと移動です。
「ここは、昨年の秋に完成したばかりの建物です。
今まで、発酵のために使われるタンクは、左奥にあるものだけでした。
広大な地域からいっきに集められた葡萄を処理するため、計画が大変でした・・・
発酵中のタンク内では、時間が経つと、葡萄が浮いてきます。それを液体に浸し込むため、レコードディスクのような形のもので、上から抑え込むのですが、それを操作するために、4人が、リモコンを片手に操作していたのです。でも、昨年に新しいステンレスタンクを導入。
最新のコンピュータ機能付ですので、これからはコンピュータが自動操作してくれます」
(これまで、収穫時期に欠かせなかった4人の作業が、
昨年から無くなったのね・・・)
タンクから葡萄のカスを取り除く作業も機械が自動に行ってくれる等など、女性は、得意げに、新しいステンレスタンクの性能を説明し続けます。
最新のコンピュータ機能を搭載するメリットとして、
衛生面、作業する人の事故防止、そして何よりも、
市場に好まれるワインの味覚の向上を唱っている。
次々と場所を移動し、ワイン製造の工程の説明を受ける中、そこで働く人たちへ、「ボンジョ~ルノ」と挨拶をしますが、私達の挨拶に反応するスタッフは誰一人としていません。
「パトリッツィオ、農園で働く人は、
ニコッとして、挨拶してくれるのにね・・・・」
「キヨミ、ここは工場だ。
働く人のメンタリティーも違うんだよ」
最近見たテレビでは、
イタリア人の貧困ぶりが報道されていました。
「昔はどこかしらで作業ができたのに、どうしてなの?
今では、何故、作業をする場がないのかしら?
不定期に入るパート。中学生のお小遣いのような収入で、このまま生活を続けていけないわ」と、額に皺を寄せ、インタビューに応じる女性は、私と同じ44歳です。
一昔前は、50代半ばの男性が、このような苦悩を訴えていましたが、今では、まだまだ働く体力のある、40代の働き手でも、働く場が無くなってきています。
昔、中国に、イタリアワインの輸出を手掛けていた頃、
イタリアのワインの作り手と一緒に、中国を訪れました。
あるワインメーカーで、ボトリング作業を目にしたイタリア人の社長は、「まだ、こんなに古い機械を使っているのですか?これでは、効率が悪いでしょう。私の友達に頼み、新しい機械、もしくは、中古でも、これより処理能力がいいものを提供しましょうか?」と提案したところ、
「いやいや、政府からの要請で、人を雇わなければならないんです。機械が全部を引き受けてしまったら、困ります」という応えが中国人から返ってきました。
なるほど。
私達が知るイタリア。
中には、職人気質が感じられる、
または、農家と自然の共存が感じられる小さな規模の営みから生まれる成果物も沢山あります。
大手の工場型ワイナリーは、効率よく製品を仕上げ、
イメージをまとって世界に【イタリア】を発信している。
流通・物流マーケットが機能し、安定的にお給料を貰える人がいること、そして、ワインを気軽に楽しめる消費者のことを思うと、それも大事な事だと思います。
でも、私はあえて、小さな農家の成果物を日本の皆様に紹介したい!
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