「成るように成る」の精神で、気楽にいってみよう!
元旦は南シエナの小さな村にある教会で合唱コンサート。
いつものように、エリーナがピアノ伴奏を務め、
私は楽譜をめくる係です。
「キヨミ、合唱団のマイクロバスは、14:45にDue pontiを出発よ。間に合いそう?なんだったら、少し早目に私達と合流しない?」
「大丈夫!私の家から、休日ダイヤの時刻で、
14:19分のバスがあるのよ。それに乗ると、集合場所に5分前に到着するの。ジャストでしょ!」
年々きつくなっていく一張羅のスーツをまとい、
履きなれないヒールのある靴をはいてバス亭で待つこと3分・5分・そして10分・・・・(嫌な予感)
携帯からバス会社に電話を入れると、
「今日は特別ダイヤ。15時から運行です」とのこと。
困った時は彼しかいません。
「ねえパトリッツィオ、私、今日、駄目だわ。
バスがないんだって・・・
さっき、通りがかりの老夫婦にヒッチハイクを試してみたけど、断られたし・・・」
すると、電話の向こうで彼が叫んでいる。
「すぐ行くぞ~!
ここからキヨミの家まで15分、Due pontiまで5分、
間に合うはずだ!待ってろ!」
時速何キロで飛ばしてくれたのでしょう?
興奮した形相で現れてくれたパトリッツィオのお陰で、
時間にギリギリセーフ!
一目さんにバスに乗り込み、
エリーナと手を握りあってはしゃいだ後、出発する思いきや・・・
ポツリ・ポツリと人が到着し続け、彼らには急ぐ様子もありません。
「とにかく、キヨミが最後でなくて良かったわ!
ちょっと気が楽!」
予定時間より遅れてバスは出発。
暫く走行すると、バスは集合場所に戻っています。
団員の一人が忘れ物をしたのが原因で戻ったのですが、集合場所にさしかかると、
(足もとにあったわ~!あると思ってたのよ~!)と叫びます。
すかさず、団長がマイクを握り、
「はい、皆さん、もう他に忘れものをした人はいないですか?携帯・口紅・片方の靴とか、履き替え用のパンツとか・・・」と言っては場を和ませている。
その後、目的地にたどり着くまで、バスの運転手は何度も道を間違え、何万回というカーブに団員は揺られ、到着すると、「すっごい拷問だったわ・・・」 と呟きながら女性達は下車している。
「エリーナ、ところで、コンサートは何時から、何処でやるの?」
「それは私も知らないわ。
サプライズがあったほうが、楽しいでしょ!
だから、あえて、知らないようにしてるの!」
世界から見るとイタリア人は変わって見えますが、
音楽家はもっと変わっている!
コンサート開始まであと5分。
「キヨミ、あのテノール、とっても歌が上手なんだけど、彼、勝手に間を飛ばすことがあるのよ。だから、彼の歌に合わせて伴奏をしなければならないの・・・」
ぶっつけ本番でページをめくる私。
(そんなことになったら、譜面、追えるかな?)
コンサートも終盤にさしかかり、
テノールは、ネッスンドルマのアリアを歌い始めると、
「待った 待った~!もう一度、初めからやらせてくれ~」と、エンストを起こしました。
彼のあまりにも自然な態度に、会場は拍手喝さいです!
村人が集まってくれた小さな教会に拍手が鳴り響き、
コンサートは大成功!
帰りのバスは、楽団員の即興合唱で盛り上がっています。
賑やかに幕をあけた2013年。
きちんとする、とか、完璧にこなす、ということ。
それを目指して準備をすることは大事だと思う。
でも、予定通りにいかないこともある。
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