シエナは相変わらず、のんびりです
パトリッツィオの運転で、市営のプールに到着。
「ありがとう!じゃ、泳いできま~す!」
「俺も行く!館内のバールにいるよ」
「あら、待っててくれるの?
でも私、一時間くらい出てこないかもよ?」
「そしたら、ピーノか誰かに会いに行くかも。
とにかく、泳ぎ終えたら電話くれ!」
「了解!」
水着に着替え、ガラス窓の向こうのバールにいるパトリッツィオに手を振り、泳ぎ始めました。
(あ~、気持ちいい!)
小屋に閉じ込められている猟犬が放たれた時のように、夢中になって、クロールで泳ぎまくる。
しばらく泳いで、ウォーキング&休憩で息を整え、
ガラスの向こうを見ると、パトリッツィオはまだ、
カウンターでマスターと話をしています。
(珍しいわね~、バールで長話をするなんて!?)
何度、ターンを繰り返したことだろう?
手ごたえある疲れに(もう十分ね!)と納得し、
プールから上がると、
まだ、パトリッツィオはカウンター話込んでいます。
スイムキャップを振り回しながら、(オーイ!)と注意をひき、「今、上がるわね~!」とジェスチャーを送ってから、簡単なシャワーを済ませてバールへ登場しました。
「お待たせ~!」
「お~、来た 来た!凄い泳ぎっぷりだったね~
まるでオリンピック選手だ!」
こういうマスターがカウンターにいてくれると嬉しい!
女性は幾つになっても、チヤホヤされたいのです。
「パトリッツィオ、
あなた、珍しく長話にふけってたわね~!」
「実はさ、俺たちが遠い親戚だってことが判明したんだ!シエナは狭いさ!」
「まあっ!」
マスターの名前はルカ。
彼に辿りつくまでの家系図を聞きながら駐車場に到着すると、パトリッツィオは車のキーの代わりに携帯を取り出しました。
肝臓を傷めてからすっかりご無沙汰している
酒好きのピーノの様子を伺います。
「お~、パトリッツィオか!今、大変なんだ!
生まれてるんだ~!
ど~しよ ど~しよ~!!!」
ピーノのアパートには、気の強いクロネコ〈ティッティーノ君〉と、同居する学生の雌猫がいますが、
そこでは、わた菓子のように真っ白なウサギのシャネルちゃんも同居しています。
ピーノは、シャネルちゃんをブルーのカバンに入れ、
毎朝、バールに行っては、
「ボンジョールノ! 俺にカンパリソーダ、
そしてシャネルにポテトチップスをくれ!」
というほどの溺愛ぶり。
そんなシャネルちゃんのお産の真っ最中でした。
「オ~、ピーノ! お爺さんになったんだな!おめでとう!」「おめでとう!」
電話口の向こうからは、「どうしよ、どうしよ」という声しか聞こえてこない・・・
数日たったら、オーガニックのニンジンにリボンを添えて、シャネルちゃんを訪れることにします。
近所に住む人との会話が心地よくて楽しいシエナの生活。
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