久々、ダリオの登場です!
「きのこ狩りに行こう!」
数日前から、そう決めていて、
私達はこの手の情報に詳しそうなピーノをリーダーにたて、森に入った。
私達とは・・・
パトリッツィオとその息子ダリオ、娘のシルビアちゃん
悪友のピーノ、そして私の5人組。
「おっ、この紫の花が咲いている、
ということは、いい兆候だ!」
目立たぬ小さな花から元気をもらい、いざ、森の中へ!
「きのこって、食べすぎたらお腹に悪いのかしら!
どうやって調理しよう!」
籠一杯のきのこを想像しながら、
レシピのアイデアが頭をよぎります。
1時間ほど散策を続け、私達が見つけたもの・・・
それは、鹿の足跡や猪が掘り返した土、ハリネズミの針毛、野生動物達のまだ新鮮な糞など等・・・
肝心のキノコは全く姿を表しません。
「おい、ダリオ、何やってるんだよ?」
伐採された枝に出くわす度に、
それを道の脇に寄せている。
レストラン「アクアボッラ」を閉店してから、
ダリオはオリーブ農園で働いていますが、
彼に任されているのは、
剪定後、伐採された枝や樹を道の脇に寄せること。
だから、どうしても、
道の脇に寄せなければ気が済まないようです。
「土の湿りが足りないから、きのこは無いね!」
粘りに欠けた私達は、2時間散策した後、バールで一休みし、近くにある温泉の川へ向かいました。その後、近郊の「PARI」という村を訪れます。
車を降りた途端、プーンと風に乗ってやってくるステーキの匂い・・・どうやら、この村では肉祭りが開催されているようです!
「お~、なんて幸運なんだ!」
路地に並べられた長テーブルに腰をおろし、
ワインとグリルの肉にありつきます。
のんびりとランチを楽しみ、しばらく村で過ごしますが、
風が強く吹き始めたのを合図に、
私達は車に乗り込み、シエナに向かいます。
運転は、昨年の秋に免許をとったダリオ。
「おい、視界が開けているじゃないか!
もう少し、スピードだせよ!」とパトリッツィオ。
「父さん、標識には70キロと書いてあった。
だから70キロぴったりで走ってるんだ。何が悪い!?」
「おい、ダリオ。
後ろについているダンプがイラついてるぞ。
脇に寄せて、追い越しさせてやれ・・・」
気付くと、後方に付く車もない。
全ての車に追い越しをされ、
パトリッツィオとピーノは彼のスピードにイラつきますが、ダリオはいたってマイペース。
ドライブインに到着。
ここで、ピーノとお別れです。
「じゃ、またな!」「おぅ、またな!」
そのまま御開きと思っていましたが、パトリッツィオは、彼の家でも、私の家でもない方向へと車を走らせます。
「ねえ、何処に向かってるの?」
「きのこを狩りに行くんだよ!」
「え~、またなの?」
今度はシエナ近郊の森に入り込み、散策すること1時間。
ピーノの場合は、森を熟知していて抜け道を知っていたけど、パトリッツィオは当てずっぽうに進んでいる。
猪が掘り起こす赤土の跡が目立つばかりで、
道はどんどん険しくなります。
「ねえ、向こう側にオリーブ畑があるわ。道になってる!あそこを辿ったら、道路に戻れるわよ!」
土手を這い上がると、人間の手が介入された、
整理整頓された自然が広がっている。
「あ、ここは僕が掃除したところだ!」
と、ダリオが呟いた。
「ちょっと~、あんた、
この農園で作業してたってこと?」
「うん」
「なんだよ、1時間経って、今ごろ気付くのかよ?」
「・・・・」
ピーノが、ダリオに会う度に言うセリフがある。それは「お前さん、酒を飲んだほうがいいよ!そのほうが、正常になれる!」
5分に一度は、なんだかんだと、論争が生じますが、
それは全て、対ダリオとの対抗戦。
声を張り上げながらも、皆、どこかで楽しんでいる。
「きのこ狩りに行こう!」
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