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2012年9月 2日 (日)

美味しい食卓

昨日、日本に到着。

いつものように、母が笑顔で迎えてくれます。

「ユーチューブを見て、あんたが真っ黒なことを確認したわよ。真っ黒な女性・赤いスーツケース、と唱えながら、探していたの」という母。

父の、「お前さん、どうして、こんなに黒くなっちゃったの?」という素朴に質問に、「夏だからよ!」と軽く返しますが、
〈素敵〉と思うことには過剰にほめ言葉を注ぐ母がコメントを控えている。

どうやら、母の価値観とは違うようで、
「また、仕出かしてやったわ!」と、悪戯心が喜んだりします。

ベランダには、田舎の叔母さんから送られてきた段ボールにジャガイモがあり、それで、プレを作りました。

今も現役で畑仕事に勤しむ81歳の叔母さん。

叔母さんの手から渡ったジャガイモは、
今後も、ず~っと手に入るとは限らない。

だから、口に運ぶ際、
何とも言えないスペシャルな気持ちが、
感動調味料となって、味つけされるのです。

「はい、お母さんが作った那須!」

母が畑で手掛けたという那須が、
お味噌汁や炒めものになって、食卓に並んでいる。

この時の、器に盛られた那須。

写真に撮ってないけれど、
味も姿も、ず~っと余韻が残ることでしょう。

美味しい食卓のレシピ、
その定義が私の中で、変わってきている。

照明や音楽、素敵な建築様式、
お客様を持て成す心のこもった接客態度・・・

素敵なお店は沢山ありますが、
私が好きな食卓は、記憶に残るような味。

最近ブログで、レシピを紹介させていただくと、

「娘と一緒に作ってみました!」とか、
「美味しく出来て嬉しいから、写真を送りますね!」
という夫婦からのメールをいただき、感動に心が小躍りします。

シーンがある!

最近、紹介した野菜スティックのレシピ、
「ピンツィモニオ」も、何でもない簡単なレシピです。

皆さんの庭には、野菜が育っていますか?
近くに、日に焼けたおじちゃんが直売している八百屋さんがありますか?

イタリアって、本当は、貧しい国です。

でも、豊な国。

なぜなら、自分たちが向き合う日常生活には、
話題が沢山あって、そこに冗談が交わされ、
美味しい時間を過ごすコツを知っている国民だからです。

私の母は、昨日、
畑からとってきたローズマリーを、トイレに飾りました。

「いい香りでしょ!」

ローズマリーと言えなくて、
一度は、「クリスマス・マリー」と口にしてから、
「ローズマリー」と言い直す母。

私は今後、ローズマリーの香りから、
我孫子のトイレを連想することになるでしょう!

日本のテレビを見ると、イタリアが登場します。

でも、どこか加工されてしまって、
よそ行き顔のイタリアしか伝わってきません。

貧しい庶民の日常が、習慣化されて、
それが伝統となったイタリア文化。

そこには、庶民の日常シーンがあるはずなのに、
どこか、ブルジョワな香りが漂っている。

外見や肩書、イメージ・・・
そんな消費社会が作り上げた騒音で、
本質がかき消されそうになるけど、
できれば、今の旬の時間を、素朴な形で味わいたい。

味わいある余韻が、ず~っと長く続くためにも・・・

43歳。

またまた、自分の嗜好の変化を感じる、今日この頃です。

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