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2012年7月15日 (日)

誕生年のワイン

産婦人科の定期検診日。

「名前を呼ばれるまで、ここでお待ちください」
と言われ、椅子に腰をかけると、目の前には、
‘分娩室’と書かれた標識があることに気付きます。

なるほど。

少し離れた椅子では、若い男性が落ち着きのない様子で、両手の指を常に絡ませ、隣の女性は、
涙声で携帯にすがるように話しかけている。

大切な人のお産を待つ人たちは、
看護婦が分娩室から現れる度に、椅子から腰を浮かせ、「フ~」とため息をついては、元の姿勢に戻る。

そんな繰り返しが続く中、分娩室から看護婦が現れ、
今度は老夫婦に向かい一声かけました。

すると、お爺さんはかなり興奮した様子で分娩室に入り
お婆さんは駄々をこねる孫娘を廊下に連れ出します。

10分ほどして、お爺さんが分娩室からカートを押して現れ、「カテリーナ!カテリーナといいます!」と、小さな声で叫ぶと、それに群がる人達は、「オ~」と、まるで天使を仰ぐような歓喜を漏らして赤ちゃんを見つめている。

私は、この神聖な空気の圧力に喉元が詰まり、
目頭が熱くなりました。

よく、「娘の誕生年のワインを購入したいのですが・・
20歳になったら一緒に乾杯したいのです」
というリクエストをいただきます。

(この子がすくすくと健康に育ちますように。そして、
成人になる頃には、親子揃って、仲良く乾杯したいのです!)という、今後の幸せを投影するワインを求める心情を知った瞬間。

以前、ワインの作り手が、
「葡萄は子供みたいに大事だからね。畑から離れられないよ」言っていたことを思い出します。

小さな規模のワイナリーは、
葡萄の房を一つ一つ確認しながら、
気象状況に合わせて、葡萄の成育に働きかけます。

誕生年のワインは、お産と同じ時間を過ごした、
農家の愛情が注がれた葡萄のワインでなければならない、ということに気付かされる、今日この頃です。

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