ケ セラセラ~なるように、なる~
昨年末、物件の契約が切れたと同時に
レストラン「アクアボッラ」を閉店したものの、
その後も、パトリッツィオは役所の関係者に連絡を入れ、契約の更新を申し出ていました。
「ボンジョルノ。アクアボッラのパトリッツィオです。
市長と面会がしたいのですが・・・」
「ちょっと、お待ちください・・・
今度の木曜日の午前中なら、時間が空いているようです」
「では、木曜日の9時に伺います」
そして、木曜日。
役所を訪れると、市長はこの日も不在。
何度、同じことを繰り返しただろう?
そうこうしているうちに、
パトリッツィオの元に一通の手紙が届きました。
「キヨミ、年金、貰えることになったよ!」
「え~!本当に!おめでとう!」
今年60歳を迎えたパトリッツィオ。
最近、イタリアの法律が代わり、
年金をもらえる年齢が67歳に引き上がりましたが、
パトリッツィオは、足の診断書を添えて、
身体障害枠で年金の申請をし、それが受理されたのです。
3年前の8月31日。
パトリッツィオがレストランから家路に向かう途中、
突然、道に黒い馬が現れ、ハンドルを切りましたが、
車は建物に衝突し、彼は救急車で運ばれました。
パトリッツィオは片足を傷め、車は廃棄処分。
その裁判がダラダラと続いていましたが、
最近になって、判決が出ました。
馬の持ち主は無罪となり、
なんと、パトリッツィオが告訴されたのです。
「もう一度、ゆっくりと、繰り返してくれる?
成り行きが理解できないのよ…」
あまりにも筋の通らない話しに、
一瞬、私がイタリア語を理解できないものと錯覚します。
「馬の持ち主は、破産申告をしたんだ。
だから、裁判や弁護士に払う金がない。
だから、その費用の支払いが俺に向けられたのさ。
判決では、問題を起こしは黒い馬は白と記述され、俺はウソの供述をしたとされた」
「でも・・・警察官だって、事故を起こしたあと、
馬が柵に入るのを見届けているじゃない…」
「全ては、金さ」
結局、パトリッツィオもお金がない、と申請して、
この裁判は御開きとなります。
一見、損をしたようだが、引き換えに、年金を受理できるという神様からのプレゼントが付いてきた!
年金が貰えると分かり、考えたあげく、
レストランの営業を諦めることにしました。
パトリッツィオの友達が次々に訪れ、今まで使ってきたフライパンやお皿達がもらわれていきます。
それまで、厨房の棚に納められていた食器類達は、
想い出に姿を変えて、一気に私の心に引越してきた。
あまりにも沢山あるから整理がつかず、
心から溢れ、涙となってまだ散乱している。
(色々、あったな~)
ケ セラ セラ
~なるように、なる~
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