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2012年6月10日 (日)

味のある田舎町

「何なのよ、あっちこっち、行ったり来たりして。
こっちまで、気が散るじゃないの!」

「カバン、見なかったか?」 

「あの、書類の入ったカバン?」

「さっきのバール(喫茶店)で寛ぎすぎた・・・・
カプチーノを2つ手に持って表テーブルに運んだだろ?
その時、カバンを傍にある椅子に置いたまま、すっかり、忘れてたよ」

「レシートにお店の電話番号があるわ!電話して!」

アクアボッラの件で市を訪れたこの日は、丁度、市場が出る日でもあり、沢山の人がバールに訪れます。そのため、電話をかけても応答しません。

「行ってくるな!」

飛び出してから1時間後、
パトリッツィオは戻ってきました。

「バールに訊ねてみたけど、知らないってさ。
店付近も、近くのゴミ箱も探したけど、見当たらない。
金目のものが無いと分かれば、どこかに捨てるはずなんだが・・・」

 
「とりあえず、ワインの発送を終えたら、
また探しに戻りましょうよ」

昼過ぎ、私とパトリッツィオはバールに戻りますが、
閉まっています。

市場の跡片づけをしている清掃の方に声をかけ、
市の職員に頼み、誰かが、カバンを届けてくれていないかどうか、全ての部屋を回って見ました。

「これ以上、町中を探しても無駄だな」

「そうね」

駐車場に戻り、車を走らせ、ゴミ収納ボックスがある度に、一時停止をしては、ふたを開けて、中を覗き込みます。

「ないわね~、じゃ次!」

「この日の事は、将来、思い出に残るぞ!何てったって、世界で有名なキャンティ・クラッシコ地区のゴミ箱、全てを巡回しているんだからな!」

こんな状況でも冗談が湧いてくる彼に呆れてしまうが、
この才能、羨ましくもある。

「ゴミ箱巡りに付き合わされるなんて・・・
レストラン巡りとかの方がいいわよ!」

「キヨミ!そんなの誰でもしていることだろ!平凡だ!
ゴミ箱巡りが出来るのは、俺、ただ一人だぞ!
しかも、キャンティクラッシコ地区の!」

「それも、そうね!忘れられないわね、きっと!」

彼のペースにつられ、楽しくなってきました。

「ねえ、モルディッキョのバールに立ち寄って、珈琲、飲みましょう!」

「了解!」

田舎道にポツンとあるこのバールには猫がいて、よく噛みつくので、モルディッキョ(噛みつき君)と呼ばれています。

寝そべっているモルディッキョの頭を撫で、
店のドアを開けようとしたら、閉まっている。

そこへ、御婆さんが取り込んだ洗濯物を抱えてやってきました。

「今、開けるわね。ちょっと、待っててちょうだいな」

お店に入ると、珈琲マシーンの電源もオフになっているので、ビールをオーダーし、カウンターで世間話を始めましたが、パトリッツィオの話しの途中で、御婆さんは、カウンターに肘をついた姿勢で、首をスーッと垂らし、イビキをかき始めました。

ハッと気づいて、起きるけど、
また、ス~っと首を垂らし、イビキを始める御婆さん。

「おばちゃん、はい、お金」

お釣りをもらいたいが、お婆ちゃんが寝てしまうので、
私たちは、諦めて、お店を出た。

「しょうがね~な~、あの婆ちゃん」

「疲れているのよ・・・
でも、あんなバール、他には無いものね」

70年代の映画に出てくるワンシーンのような、
田舎の光景が、心地よい。

この日の夜、警察から連絡があり、新聞スタンドでカバンが見つかったとの連絡を受けました。

翌日、町に戻ると、
「カバン、見つかった?」「カバン、どうなった?」と
通りがかる全ての人から声をかけられるので、私たちはスター気取り。

小さな町の住民は、自分たちの町の評判が悪くなることを嫌うため、何としてでも見つけるらしい。

天然のスローライフ、
美味しい時間を味わっている今日この頃です!

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