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2012年6月

2012年6月26日 (火)

ナポリのセレナーデ爺さん

「チャオ、パトリッツィオ。もうすぐバス停に到着するわ!」

「おぅ、分かった。今、行くな!」

重たい買い物袋をひきずってバスを降り、
パトリッツィオの車に乗り込みました。

「さっきまでの大変だったのよ。
ナポリのお爺ちゃんに、ず~っと口説かれてたの」

やれやれ、といった、ちょっとイタリア人っぽいジェスチャーで、話しを切り出します。

「あのバスを利用する人なら皆、彼の女好きを知ってるわ。彼が乗った途端に呆れ顔をするご婦人もいるのよ!60代までの女性、全に声をかけてるわね!きっと。とにかく、ご婦人が通りかかる度に、ケ ベッラ!(なんて素敵な!)って、声が漏れるの・・・」

「名物オヤジだな!」

パトリッツィオは面白そうに耳を傾けます。

「耳が遠いもんだから、話しが周囲に筒抜け。
フルートとギター奏者だったんですって。
オペラのさびの部分を次々に歌い続け、終いには、私を見つめて、アマポーラの歌詞 ~君はどうして、一人でいられようか~・・・電話番号教えて!ってリピートするの。ここまで大声で口説かれると、日常会話の一端みたいに思えてくる」

歌って、恋して、食べるをモットーとするイタリア。
特に南の人は、オープンです。

「ほら、古き良きイタリア映画に登場する女は、こんな時、魚屋の女みたいに威勢のいい声を張り上げて ~もう、いい加減におしよっ!て、あしらうでしょ!だから、私も大声で、~何、言ってんのよ~!って答えたわ。」

お爺ちゃんは、歌の合間に、
(私のルックスは、いけてるかい?)と尋ね、
(アイロンのきいたシャツ、エレガントね)と答えると、
(明日は、ブルーのネクタイをするぞ)と言う。

お爺さんの下車駅が近付き、買い物袋を手に取ると、
(いいかい、今のボーイフレンドと分かれたら、次は私の番ですぞ)っと念をおしてドアに向かって行った。
そのわずかな距離も、しっかりと女性を鑑賞している。

「この前なんてね、隣に座ってきて、すました顔して、さり気無くお尻さわってくるから、その手をはたいてやったのよ」

パトリッツィオは思わず、(アハハ)と声をあげた。

「キヨミ、今度、お尻触られたら、そいつの手を掲げて、こう言うんだ。

~これ、どなたのかしら~?私のお尻に忘れていきましたよ~!って」

Spaghetti_009


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2012年6月18日 (月)

梅雨空に青空を!

イタリアが好きで、このブログに訪れてくださる皆さん!

 

この曲の、さびの部分だけでも覚えて、

口ずさんでみませんか!

 

ユーチューブの画像に合わせて、御一緒に歌いましょう!


Penso che un sogno cosi’ non ritorni mai piu’

ペンソ ケ ウン ソンニョ コズィ ノン リトルニ マイ ピュ
あんな夢は 二度と見られないでしょう

mi
 dipingevo  le  mani  e  la  faccia  di  blu,

ミ ディピンジェーヴォ レ マーニ エ ラ ファッチャ ディ ブル
手と顔を青く染め

poi
  d’improviso  venivo  dal  vento  rapito

ポイ ディンプロヴィーゾ ヴェニヴォ ダル ヴェント ラピート
突然吹いた風は 素早く私をさらい

e
  incominciavo  a  volare  nel  cielo  in  finito

エ インコミンチャーヴォ ア ヴォラーレ ネル チェロ イン フィニート
終わりのない空へ飛ばした

Volare, oh oh
  Cantare, oh oh oh oh

ヴォーラーレ オーオ カーンターレ オオオーオ
飛んでいる おぉ    唄っている おぉ

Nel
 blu  dipinto  di  blu,

ネル ブル  ディピント  ディ  ブル
青に 青く染められて

felice
 di  stare   lassu’

フェリーチェ  ディ スターレ ラスゥ
空高く舞い上がる幸せ

E
 volavo, volavo felice  piu’  in  alto

エ ヴォラーヴォ ヴォラーヴォ フェリーチェ ピュ イン アルト

飛んで 飛んで はずむ心 どこまでも高く

 

del sole ed ancora piu’ su,

デル ソーレ アンコーラ ピュ ス
気がつけば 太陽よりもずっと高く

mentre
  il  mondo  pian  piano  spariva  lontano  la  giu’,

メントレ イル モンド ピアン ピアーノ スパリーヴァ ロンターノ ラ ジュ
そして世界はだんだんと遠ざかって行った

una
  musica  dolce  suonava  soltanto  per  me.

ウナ ムズィカ ドルチェ スオナーヴァ ソルタント ペル メ
私だけのために 奏でられた甘い音色

Volare, oh oh
  Cantare, oh oh oh oh

ヴォーラーレ オーオ カーンターレ オオオーオ
飛んでいる おぉ    唄っている おぉ

Nel
 blu  dipinto  di blu,

ネル ブル ディピントー ディ ブル
青に 青く染められて

felice
 di  stare   lassu’

フェリーチェ  ディ  スターレ ラスゥ
空高く舞い上がる幸せ

 

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2012年6月10日 (日)

味のある田舎町

「何なのよ、あっちこっち、行ったり来たりして。
こっちまで、気が散るじゃないの!」

「カバン、見なかったか?」 

「あの、書類の入ったカバン?」

「さっきのバール(喫茶店)で寛ぎすぎた・・・・
カプチーノを2つ手に持って表テーブルに運んだだろ?
その時、カバンを傍にある椅子に置いたまま、すっかり、忘れてたよ」

「レシートにお店の電話番号があるわ!電話して!」

アクアボッラの件で市を訪れたこの日は、丁度、市場が出る日でもあり、沢山の人がバールに訪れます。そのため、電話をかけても応答しません。

「行ってくるな!」

飛び出してから1時間後、
パトリッツィオは戻ってきました。

「バールに訊ねてみたけど、知らないってさ。
店付近も、近くのゴミ箱も探したけど、見当たらない。
金目のものが無いと分かれば、どこかに捨てるはずなんだが・・・」

 
「とりあえず、ワインの発送を終えたら、
また探しに戻りましょうよ」

昼過ぎ、私とパトリッツィオはバールに戻りますが、
閉まっています。

市場の跡片づけをしている清掃の方に声をかけ、
市の職員に頼み、誰かが、カバンを届けてくれていないかどうか、全ての部屋を回って見ました。

「これ以上、町中を探しても無駄だな」

「そうね」

駐車場に戻り、車を走らせ、ゴミ収納ボックスがある度に、一時停止をしては、ふたを開けて、中を覗き込みます。

「ないわね~、じゃ次!」

「この日の事は、将来、思い出に残るぞ!何てったって、世界で有名なキャンティ・クラッシコ地区のゴミ箱、全てを巡回しているんだからな!」

こんな状況でも冗談が湧いてくる彼に呆れてしまうが、
この才能、羨ましくもある。

「ゴミ箱巡りに付き合わされるなんて・・・
レストラン巡りとかの方がいいわよ!」

「キヨミ!そんなの誰でもしていることだろ!平凡だ!
ゴミ箱巡りが出来るのは、俺、ただ一人だぞ!
しかも、キャンティクラッシコ地区の!」

「それも、そうね!忘れられないわね、きっと!」

彼のペースにつられ、楽しくなってきました。

「ねえ、モルディッキョのバールに立ち寄って、珈琲、飲みましょう!」

「了解!」

田舎道にポツンとあるこのバールには猫がいて、よく噛みつくので、モルディッキョ(噛みつき君)と呼ばれています。

寝そべっているモルディッキョの頭を撫で、
店のドアを開けようとしたら、閉まっている。

そこへ、御婆さんが取り込んだ洗濯物を抱えてやってきました。

「今、開けるわね。ちょっと、待っててちょうだいな」

お店に入ると、珈琲マシーンの電源もオフになっているので、ビールをオーダーし、カウンターで世間話を始めましたが、パトリッツィオの話しの途中で、御婆さんは、カウンターに肘をついた姿勢で、首をスーッと垂らし、イビキをかき始めました。

ハッと気づいて、起きるけど、
また、ス~っと首を垂らし、イビキを始める御婆さん。

「おばちゃん、はい、お金」

お釣りをもらいたいが、お婆ちゃんが寝てしまうので、
私たちは、諦めて、お店を出た。

「しょうがね~な~、あの婆ちゃん」

「疲れているのよ・・・
でも、あんなバール、他には無いものね」

70年代の映画に出てくるワンシーンのような、
田舎の光景が、心地よい。

この日の夜、警察から連絡があり、新聞スタンドでカバンが見つかったとの連絡を受けました。

翌日、町に戻ると、
「カバン、見つかった?」「カバン、どうなった?」と
通りがかる全ての人から声をかけられるので、私たちはスター気取り。

小さな町の住民は、自分たちの町の評判が悪くなることを嫌うため、何としてでも見つけるらしい。

天然のスローライフ、
美味しい時間を味わっている今日この頃です!

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