バランスの芽生え
「街を散歩してみようか?」
パトリッツィオとシエナの街を歩いてみた。
ショーウインドウに小奇麗に並べられた香水、時計、
鞄などを眺めてみるけど、
「フ~ン」というコメント以外、何も感想が出てこない。
「ビールでも、飲むか?」
「いいえ、いらないわ」
「アイスクリーム、食べたい?」
「いや、要らない」
沢山の人、お店があるにもかからず、
私もパトリッツィオも、
どこに焦点を合わせてよいのか分からない。
結局、私たちは、街の中心、カンポ広場に寝ころんで本を読み、風が涼しいトーンに切り替わったのを合図に、「そろそろ、帰ろう!」と腰をあげました。
翌日、私たちは、いつものようにアクアボッラで過ごした。
「パトリッツィオ、これから家を出るわね!
パスタを茹で始めてちょうだい!
冷蔵庫に、甘いトマトと、缶詰め半分に残ったツナがあったから、それに、ケーパーと玉ねぎ、オリーブオイルをたっぷりとかけて、タッパーに入れたの。これに、茹であがったパスタを合えましょう! 美味しいランチの出来あがりよ!」
シンプルだけど、気の休まる美味しいランチに、
ついつい、白ワインも進みます。
「ねえ、風が青く匂うわね・・・
丁度、ソラマメを茹でてザルでお湯を切った時、
プーンと漂うような、青い匂いがする」
「あ~、本当だな!」
そこへ、光沢ある緑色をしたカナブンが飛んできて
パトリッツィオの腿に停まり、
軽く会釈をして去って行きました。
43歳の春。
小さな頃から、(世の中と焦点が合わない)、と
不安定を感じることが多々ありました。
そんな自分の内面に、バランスが芽生えてきた。
頭上を飛ぶツバメのお腹を目で追って、
キジが雄叫びを上げた方角に、距離を観測して、
小さな花を揺らす風の技に注目して・・・・
ついこの前まで、蟻の行列をみると、
殺虫剤を片手にシューッと抹殺していたのに、
今では、「彼らなりの生き方」を、同じ地球に生きる仲間のような感覚で眺めている。
こういった、自然のあり方を客観的に観察すること、
それは、他の人間の在り方、言動も、自分に影響を及ぼすもの、と構えた見方をするのではなく、どこか客観的に、そして尊重して見ることに繋がるような気がします。
自分を取り巻く環境に、
心地よいものと、そうでないものがあるけど、
そんなものは、車の雑音のように、
自分の意識に取り入れなければいいだけのこと。
バランスが芽生えてきた・・・
そんな内面の変化を嬉しく思う、今日この頃です。
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