« 2012年4月 | トップページ | 2012年6月 »

2012年5月

2012年5月30日 (水)

バランスの芽生え

「街を散歩してみようか?」

パトリッツィオとシエナの街を歩いてみた。

ショーウインドウに小奇麗に並べられた香水、時計、
鞄などを眺めてみるけど、
「フ~ン」というコメント以外、何も感想が出てこない。

「ビールでも、飲むか?」
「いいえ、いらないわ」

「アイスクリーム、食べたい?」
「いや、要らない」

沢山の人、お店があるにもかからず、
私もパトリッツィオも、
どこに焦点を合わせてよいのか分からない。

結局、私たちは、街の中心、カンポ広場に寝ころんで本を読み、風が涼しいトーンに切り替わったのを合図に、「そろそろ、帰ろう!」と腰をあげました。

翌日、私たちは、いつものようにアクアボッラで過ごした。

「パトリッツィオ、これから家を出るわね!
パスタを茹で始めてちょうだい!
冷蔵庫に、甘いトマトと、缶詰め半分に残ったツナがあったから、それに、ケーパーと玉ねぎ、オリーブオイルをたっぷりとかけて、タッパーに入れたの。これに、茹であがったパスタを合えましょう! 美味しいランチの出来あがりよ!」

シンプルだけど、気の休まる美味しいランチに、
ついつい、白ワインも進みます。

「ねえ、風が青く匂うわね・・・
丁度、ソラマメを茹でてザルでお湯を切った時、
プーンと漂うような、青い匂いがする」

「あ~、本当だな!」

そこへ、光沢ある緑色をしたカナブンが飛んできて
パトリッツィオの腿に停まり、
軽く会釈をして去って行きました。

43歳の春。

小さな頃から、(世の中と焦点が合わない)、と
不安定を感じることが多々ありました。

そんな自分の内面に、バランスが芽生えてきた。

頭上を飛ぶツバメのお腹を目で追って、
キジが雄叫びを上げた方角に、距離を観測して、
小さな花を揺らす風の技に注目して・・・・

ついこの前まで、蟻の行列をみると、
殺虫剤を片手にシューッと抹殺していたのに、
今では、「彼らなりの生き方」を、同じ地球に生きる仲間のような感覚で眺めている。

こういった、自然のあり方を客観的に観察すること、
それは、他の人間の在り方、言動も、自分に影響を及ぼすもの、と構えた見方をするのではなく、どこか客観的に、そして尊重して見ることに繋がるような気がします。

自分を取り巻く環境に、
心地よいものと、そうでないものがあるけど、
そんなものは、車の雑音のように、
自分の意識に取り入れなければいいだけのこと。

バランスが芽生えてきた・・・

そんな内面の変化を嬉しく思う、今日この頃です。

|

2012年5月25日 (金)

今日の一歩

数年前、
テレビでアメリカのリアリティーショーを見ました。

一軒家で20人ほどの少年が共同生活を送ります。

彼らには課題が与えられ、そのテーマについて競い、
評価され、結果を出せなかった者は家から去っていく。

日々、少年の数が絞られ、最後に勝ち残ったものが賞金を手にする、という設定です。

集められた少年たちはグループ化され、
グループ単位でテーマに挑みます。

実はこの少年達、過去に犯罪を犯し、
少年院に送られた経験を持つ者ばかり。

与えられたテーマに仲間と挑むことで、
協調性を身につけ、社会復帰へ向かう、
というのがこの番組の趣旨です。

この日の課題は、ボルダリング。

腰にロープを巻き付け、
石が埋め込まれた高い壁を登るというスポーツです。

ある一人の少年は、高所恐怖症。

その少年がいるグループでは、
苦虫を噛み潰したような表情と敗北の空気が漂います。

試合開始。

高所恐怖症の少年は
スタート地点から、額に汗を浮かべている。

彼は、一つ石をつかみ、足の置き場を確保し、また一つ石を握っては、足の置き場を探り、ゆっくり登って行きました。

(下をみないぞ!)という彼の決心は、見ている者全てに伝わり、皆も拳を握り締めて見守っています。

この試合設定の素晴らしいところは、
「君は、どこを目標にする?」と一人一人に問いかけ、
各々が目標を設定できること。

高所恐怖症の少年は、
「できたら、半分までは登りたい・・・」
と目標を掲げました。

彼は、半分に差し掛かったところで、墜落。

マット上で跳ね返り、
涙を流して、子供のように喜ぶ彼。

その勇気を見せつけられた少年達の感動は、
歓声となって力強いシンフォニーを奏でました。

それぞれの人間は、有り方が違う。

社会の平均から判断されて、劣っているだの、
優れているだの裁かれてしまいがちだけど、
効率よく物事を進めようと先を急ぐ社会に評価を求めるのは、何か、冷たさが伴います。

パトリッツィオは今日も、役所に連絡を入れ続けます。

アクアボッラの今後について、市の関係者、お金持ち
企業や団体が役所にプロジェクトの申し出をする中、
人脈、根回し、資産などを持たないパトリッツィオも
彼の企画書を提出し、連絡をとろうと毎日動いている。

千葉の実家では、年金生活を送る母が、
全く経験のない貿易とか、輸入について、
あちらこちらの役所に足を運びながら、あることへの準備に向けて、昨日まではなかった知識をちょっとずつ形にしている。

必ずしも、
思った通りの目標地点にたどり着けるとは限らない。

でも、自分のキャパを超える課題に取り組む姿は美しく、その過程からは、何かが生まれる。

「無理だよ・・・」
と思ったら、そこに、新たな耕地が与えられたと思うと同時に、そこで、汗をかいて取り組もうとしている自分の姿を想像してみようかな?

自分の生き方が美しいと思えると、
なんだか、前に向かいたくなってくる!

|

2012年5月22日 (火)

夢のせて、走りましょう!

現実をベースに、将来を考えると、
夢を見るのに苦労を感じることがありますね・・・・

そういう時は、過去に戻ってみましょうか!

昔は、自分たちの憧れや拘りの設計図を描き、
工夫を重ねながら夢を形にしていった。

グローバル化が浸透した今。

利便性や効率性に基づき生産される規格製品は
モノトーンで無表情。

5月19日、
シエナでヴィンテージカーのレースがありました。

その模様を皆様にお伝えしましょう。

大人になって、童心を抱きたくなる、今日この頃です!

|

2012年5月10日 (木)

1952年生まれの男たち

パトリッツィオは愚図つき模様の低気圧。

人と接するのが億劫に感じる、そんな時に、
悪友ピーノが友達を連れてアクアボッラにやってきた。

屋外テーブルにピーノと連れの2人、そして私が加わり、
たわいも無い話をしている中、パトリッツィオは、
忙しいふりをして、テーブルから離れている。

相手に合わせて愛想笑いが出来ない、不器用な彼。

情緒不安定な時は、隠れて小さくなるどころか
そんな気分を堂々と表現するところが、潔い。

暫くすると、物置から草刈り機を取り出し、
私たちのテーブル周辺の草を刈り出した。

(グァン グァン グァン・・・・グァァーン…)

「俺たちに、(早く、帰れ!)って言ってるな」

草刈り機に負けないよう、ピーノは声を張り上げて、
尚も笑い話を続けている。

そして、翌日もピーノは現れた。

この日のパトリッツィオは、昨日よりは回復したものの
やはり曇り模様。

ピーノの冗談にノリが悪いどころか、
彼の存在を無視するような態度をとるもんだから、
ピーノはとうとう声を張り上げた。

「おい、何だよ!情緒不安定だか何だか知らないが、
友達に対する態度ってもんが、あるだろうが!」

緊迫した空気からちょっと離れたところで、
二人の様子に耳を傾ける。

「オーイ、爺さん! コーヒー!」

ピーノを呼びつけるパトリッツィオの声は
相変わらずぶっきら棒。

でも、エスプレッソに入った砂糖のように、
珈琲を差し出すパトリッツィオの行為は、
今までの苦い空気に甘みを加えた。

「お~丁度、飲みたいと思ってたんだ。グラッツェ!」

その後もピーノはよく現れる。

最近のパトリッツィオは晴天。

パトリッツィオは、友達を悪く言うし、
彼の友達も、パトリッツィオを悪く言う。

でも結局、彼らは仲が良い。

月の姿が変わるように、
人も、そして その場の空気も変わるのが当たり前。

それを受け止めながら、嫌な思いをしようが、
またひょっこり顔を出す52年生まれの男の友情。

人間関係について、色々な本が出ていて、
それには相手と上手に付うノウハウが書いてある。

マナーに気を配りながら、
相手に不快感を抱かせないよう、清潔な関係を築き上げる。それも大事なことだと思う。

でも、今の自分をさらけ出して、
相手の悪口を言い、自分も言われながら、
結局、懲りずに一緒にいる。

そんな、お互いの嫌な臭いをも感じるような関係に、
魅力を感じる今日この頃です。

|

2012年5月 5日 (土)

5月アルバム&ご報告

ぐずついた雲がすっかり遠のき、晴天に恵まれるシエナ。
ここ数日の恵みの雨で、自然界はますますご機嫌です!

Cimg2386


ほのかに甘いアカシアが薫るトスカーナでは、
ミツバチたちが収穫に大忙し。
蜂蜜が出来るのは、6月ごろ。

Cimg2432


フランスに住むパトリッツィオの甥っこが、
愛犬kyoto君を連れてやってきた!
Cimg2415

そして・・・ご報告なのですが、
ダリオが、オリーブオイルのファンチュッリ農園で働き始めました。

高校を中退してから家に引きこもり、
アクアボッラのレストランを閉めてから
また、4か月間、引きこもってしまった彼。

生まれて初めて、親元を離れ、頑張ってます!

|

« 2012年4月 | トップページ | 2012年6月 »