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2012年5月10日 (木)

1952年生まれの男たち

パトリッツィオは愚図つき模様の低気圧。

人と接するのが億劫に感じる、そんな時に、
悪友ピーノが友達を連れてアクアボッラにやってきた。

屋外テーブルにピーノと連れの2人、そして私が加わり、
たわいも無い話をしている中、パトリッツィオは、
忙しいふりをして、テーブルから離れている。

相手に合わせて愛想笑いが出来ない、不器用な彼。

情緒不安定な時は、隠れて小さくなるどころか
そんな気分を堂々と表現するところが、潔い。

暫くすると、物置から草刈り機を取り出し、
私たちのテーブル周辺の草を刈り出した。

(グァン グァン グァン・・・・グァァーン…)

「俺たちに、(早く、帰れ!)って言ってるな」

草刈り機に負けないよう、ピーノは声を張り上げて、
尚も笑い話を続けている。

そして、翌日もピーノは現れた。

この日のパトリッツィオは、昨日よりは回復したものの
やはり曇り模様。

ピーノの冗談にノリが悪いどころか、
彼の存在を無視するような態度をとるもんだから、
ピーノはとうとう声を張り上げた。

「おい、何だよ!情緒不安定だか何だか知らないが、
友達に対する態度ってもんが、あるだろうが!」

緊迫した空気からちょっと離れたところで、
二人の様子に耳を傾ける。

「オーイ、爺さん! コーヒー!」

ピーノを呼びつけるパトリッツィオの声は
相変わらずぶっきら棒。

でも、エスプレッソに入った砂糖のように、
珈琲を差し出すパトリッツィオの行為は、
今までの苦い空気に甘みを加えた。

「お~丁度、飲みたいと思ってたんだ。グラッツェ!」

その後もピーノはよく現れる。

最近のパトリッツィオは晴天。

パトリッツィオは、友達を悪く言うし、
彼の友達も、パトリッツィオを悪く言う。

でも結局、彼らは仲が良い。

月の姿が変わるように、
人も、そして その場の空気も変わるのが当たり前。

それを受け止めながら、嫌な思いをしようが、
またひょっこり顔を出す52年生まれの男の友情。

人間関係について、色々な本が出ていて、
それには相手と上手に付うノウハウが書いてある。

マナーに気を配りながら、
相手に不快感を抱かせないよう、清潔な関係を築き上げる。それも大事なことだと思う。

でも、今の自分をさらけ出して、
相手の悪口を言い、自分も言われながら、
結局、懲りずに一緒にいる。

そんな、お互いの嫌な臭いをも感じるような関係に、
魅力を感じる今日この頃です。

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