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2012年4月25日 (水)

入院編3 「ボランティア」

本を読んでると、病室の入り口に女性が立っていることに気付いて、顔を上げた。

「ごめんなさいね。邪魔をするつもりはないのだけど
何か、お役に立てますか?」

「あ、はい・・・」

「私、ボランティアです。
何か、欲しいものはありますか?」

「すみません・・・昨日の夜から何も食べてなくて、
お腹が空いているのですが・・・」と本音を漏らすと、

「あと1時間で夕食が始まりますよ」と教えてくれた。

「それだったら、待ちます」

「御水をお持ちしましょうか?」

「はい。お願します」

「ガス入りがいいかしら?
それとも、普通のお水がいいかしら?」

「普通のお水でお願いします」

5分くらいして、彼女は水を持って現れた。

「時間がかかって、ごめんなさいね」

「いいえ、とんでもないです。
あの~、あなたは、他の仕事を持ちながらも、
ボランティアとして病院に時間を捧げているのですか?」

彼女は私の目をみつめ、常に静かにほほ笑んでいる。

「私ね、沢山の御恵みをいただいて生きているの。
そのうちの、ほんの一部でも、
他の方にお返ししたいって思って・・・」

「私は、キヨミといいます。あなたの御名前は?」

「ダニエラです。では、御大事にね」

彼女とどの位、話をしただろう?

ツーっと、右目、そして左目から涙が顔をつたって滑り落ちていく。

その時、どうして、私が病院で過ごすことになったのか、答えが見えた。

最近、自分のことばかり考えていた。

自分の仕事に有利になる人を仰ぎ、
尊敬のまなざしで見つめ、
また、自分もそのように見られたい、と
益々、格好つけていった・・・・

救急隊、ダニエラのような、ボランティア活動が存在するイタリア社会は、豊かじゃない!

経済破綻とか、不況とか、失業率とか・・・

そんな言葉がニュースにはびこるから、
野の花のように、ひっそりと咲く人間社会の豊かさを見過ごしてしまってた。

お金が無いと、全てがお終。
何も出来ない、生きていけない・・・
という考え方しか蔓延らない以上、人は将来を悲観する。

お金があっても、今を楽しめないのは、
こういうことなのかな?

ちなみに、
今回の検査、入院費など、一切において、全て無料でした。

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