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2012年4月

2012年4月29日 (日)

入院編5 「ストライキ」

「今日、退院できますよ」

朝の問診で先生にそう言われ、大喜び!

偶然にも今日は、
前から予約を入れていた年に一度の子宮の検査の日。

看護婦さんに連れられ、迷路のような廊下とエレベータをつたい、やっとのことで産婦人科に到着です。

「予約時間、ピッタリに到着!」

とは言うものの、待合室には、
数人の女性が待ちくたびれた様子で座っている。

「今日は、
医学研修生がストライキを起こしているらしいわ」

「ストライキ!」

「そう。全国規模でね」

渡されたチラシに目を落とす。

「親愛なる政府様。あなた方は若者に投資を!
という素晴らしい方針を掲げながら、言う事とやる事が全く矛盾している。年間、11,000ユーロぽっちで働かせるなんて・・・いい加減にして!」

子宮癌の検査は、医学研修生が行うらしい。

しかし今日は医学生がストライキを起こしているので、
ベテランの医師が兼任することになります。

待合室には、
「時間がかかっても皆様の診察は保証します」
といったお知らせが貼られている。

30分が経過し、1時間が経過し・・・・

時間がたつにつれ、
待合室は女性のため息で充満する。

とうとう一人の女性が受付に向って歩き、戻ってきた。

そして、隣の人に、しかし、明らかに皆に聞こえるように、荒々しく呟いている。

「女医さんが今、出産を手掛けているんですって。
それが済んだら、上階から降りてくれるらしいわ!」

「じゃあ、あと、10分や20分の問題じゃないわよね、私、2か月前から予約を入れたのに、参っちゃうわよ」

「私もよ。この日のために休日を申請したのに・・・
丸一日、病院で過ごすなんて、全く~」

ストライキを起こしたら、沢山の患者が被害を被ることを分かっていながら2日間にわたってストライキを決行する医者の卵たち。

もう少し、違う方法はないのかしら?

優秀かもしれないけど・・・・
人間として美しくない。

病院には、色々なメンタリティーの人が働いているな、と感じる今日この頃です。

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2012年4月27日 (金)

入院編4 「パトリッツィオのお見舞い」

朝の10時。

今日も、パトリッツィオが病室に現れてくれた。

「どう?」

「大分いいわ!
でも、御風呂に入ってないから臭いでしょ、私」

「キヨミが臭いだと!?と~んでもない。
薔薇の香りがするよ」

こういう彼の表現は、優しい香りがする。

「頭がかゆくてたまらないのよ。
髪の毛、ベトベトしちゃってるし・・・・」

すると、彼は部屋の洗面台の前に椅子を置き、
「はい、こっちに座って」と合図をする。

「ほら、床屋みたいに頭を洗面台に向かって倒すんだ」

お湯加減は丁度良い。

大きな手で優しく、
備え付けの石鹸を使って髪を洗ってくれました。

「あ~、すっきり!最高の気分だわ!
どうもありがとう」

「どういたしまして!キヨミ、コーヒーいる?」

「お願いしよっかな!」

彼が売店に向かっている間、持参してくれた袋の中身をみると、可笑しさがこみ上げた。

彼は、天然の女音痴。

お願いした靴下やタオルの他に、ストッキングや水着など・・・意味不明なモノまで入っている。

「はい、お待ちどう!」

「待ってました~、ありがとう。
ところで、ティティちゃんは元気?」

「全然、問題ない。
ソファーにふんぞりかえって、タバコ吸ってるよ。
主人気取りさ!
(あんたも、イップク、どう?)って俺に差し出しては、
プハーってやってるよ」

「そう!」

今までパトリッツィオのことを、
(仕事を避けて、楽ばかりする人ね)と、
憎らしく思ったりしましたが、
出来る範囲のことであれば、喜んで、尽くしてくれる。

病気になって、身近な人たちの愛を再確認する今日この頃です。

Patrizione

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2012年4月26日 (木)

ちょっと休憩

シエナの様子をどうぞ!

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2012年4月25日 (水)

入院編3 「ボランティア」

本を読んでると、病室の入り口に女性が立っていることに気付いて、顔を上げた。

「ごめんなさいね。邪魔をするつもりはないのだけど
何か、お役に立てますか?」

「あ、はい・・・」

「私、ボランティアです。
何か、欲しいものはありますか?」

「すみません・・・昨日の夜から何も食べてなくて、
お腹が空いているのですが・・・」と本音を漏らすと、

「あと1時間で夕食が始まりますよ」と教えてくれた。

「それだったら、待ちます」

「御水をお持ちしましょうか?」

「はい。お願します」

「ガス入りがいいかしら?
それとも、普通のお水がいいかしら?」

「普通のお水でお願いします」

5分くらいして、彼女は水を持って現れた。

「時間がかかって、ごめんなさいね」

「いいえ、とんでもないです。
あの~、あなたは、他の仕事を持ちながらも、
ボランティアとして病院に時間を捧げているのですか?」

彼女は私の目をみつめ、常に静かにほほ笑んでいる。

「私ね、沢山の御恵みをいただいて生きているの。
そのうちの、ほんの一部でも、
他の方にお返ししたいって思って・・・」

「私は、キヨミといいます。あなたの御名前は?」

「ダニエラです。では、御大事にね」

彼女とどの位、話をしただろう?

ツーっと、右目、そして左目から涙が顔をつたって滑り落ちていく。

その時、どうして、私が病院で過ごすことになったのか、答えが見えた。

最近、自分のことばかり考えていた。

自分の仕事に有利になる人を仰ぎ、
尊敬のまなざしで見つめ、
また、自分もそのように見られたい、と
益々、格好つけていった・・・・

救急隊、ダニエラのような、ボランティア活動が存在するイタリア社会は、豊かじゃない!

経済破綻とか、不況とか、失業率とか・・・

そんな言葉がニュースにはびこるから、
野の花のように、ひっそりと咲く人間社会の豊かさを見過ごしてしまってた。

お金が無いと、全てがお終。
何も出来ない、生きていけない・・・
という考え方しか蔓延らない以上、人は将来を悲観する。

お金があっても、今を楽しめないのは、
こういうことなのかな?

ちなみに、
今回の検査、入院費など、一切において、全て無料でした。

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2012年4月24日 (火)

入院編2 「トイレ」

「すみませーん」

もう我慢できない。そろそろ、すっきりしたい。

思い切って、
スタッフのいる事務に向かって声を発してみた。

「どうしたんですか?」

研修生らしき若い女性が顔をのぞかせた。

「御トイレにいきたんですけど」

すると彼女は
ベット脇にある塵トリのような容器を差し出し、

「はい、これを使ってください」と言って、
私の腰の下に据え、部屋を出て行った。

躊躇しながらも用を足し、
「すみませーん!」と声をあげても、
今度は誰も来てくれない。

左腕には点滴のチューブがあるし、ベットは高いし・・・

集中し、容器から液体がこぼれて面倒くさいことにならないよう、それを床に置いた。

(また、女性が通りかかったら、声をかければいいわ・・・)

用が無い時には、沢山人がいるくせに、
用を頼みたい時になると、今度は、誰もいない。

暫くしてから、不意に若い男性が入ってきた。

「どうですか?様子は」

彼の姿に慌ててしまい、
「あっ、ちょっと、入らないで・・・
その~、御トイレ済ませたんですけど・・・」

恥ずかしいけど、しょうがない。

看護師は、ほんの少し顔色を変えて、容器を手に取り、
部屋を出て行った。

(あ~、トイレが問題ね・・・・)

脳のスキャンを終え、病室があてがわれ、
夕方になると、またトイレに行きたくなった。

部屋に入ってきた年配の看護婦さんに声をかけてみる。

「すみません、トイレに行っていいですか?」

「ダメダメ!まだ動いちゃダメよ。はい、これ」

また、例の容器だ・・・

彼女は慣れた手つきで私のパジャマを下げ、
鼻歌を歌いながら容器に手をかけ、その場で待っている。

「ありがとうございます」

「なんでも、ないわよ!」 

曲になってないような鼻歌を歌い続けながら
部屋の点検を済ませると、彼女は隣の部屋に向かった。

その後も、彼女は「もうそろそろ、御トイレ、どう?」
と部屋を訪ねてくれる。鼻歌を歌いながら。

自分が頼みづらいことを、相手から切り出してくれる、ということは、どんなに有難いことか!

鼻歌を歌い「なんでもないわよ!」と言って、人と接する、
この事を、年配の看護婦さんから学んだ、今日この頃です。

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2012年4月23日 (月)

入院編1 「救急隊」

目を開き、数拍経ってから、考え始めた。

「あれ?どうしてここに寝てるの?」

「なんだか、頭が響く・・・」

「アッ!頭にコブがある・・・私、倒れたんだ・・・でも、何故?」

慎重にベットに向かい、横たわってみたものの
自分自身をコントロールできない、という衝撃と頭痛が気になり、眠れそうもありません。

「救急車を呼ぼう」

スポーツウェアに着替え、ティティちゃんに水とカリカリを山盛りに残し、10分後には外に出た。

「何が起こったの? 生まれは? 同居人は? アレルギーは? 今、妊娠してる? 家族に病気の人がいる?・・・」

白衣を着た女医の質問を受けながら、点滴を受け、そして車は静かに走り出します。

後方席には、オレンジ色のユニフォームを着た3人の救急隊と私。

車の揺れが心地よい。

目を閉じる度に、救急隊員に突かれ「大丈夫?」と確認されるから、
彼らと話をすることにした。

「こんな朝早くから、お仕事、御苦労さまです」

「私たち、ボランティアなのよ」

「エ~、そうなんですか?私、猫のボランティアだったら参加するけど…」

 

すると、発音からして明らかに移民と分かる、アフリカ人の救急隊が
「僕は、イタリア人のボランティアです!」と言ってはクックッと笑った。

「ちょっとあんた!殴られたい?」とイタリア女性隊員から突っ込みが入る。

病院に到着。

脳のスキャンも済ませ、一安心。

救急患者の運ばれるフロアーには沢山のスタッフが行き交っている。

若いスタッフの笑い声が溢れていて、
まるで、大学の食堂のようです・・・・(続く)

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2012年4月22日 (日)

ブログ再開の前に!

皆さん、今日は

シエナの大多和聖美(おおたわきよみ)です。

すっかり体調が戻り、
仕事もペースを取り戻したところで、ブログの再開です!

4月半ば、ある日の早朝、

気を失って倒れ、頭に大きなコブを作ってしまったため、入院となりました。

脳のスキャンや神経外科の検査を繰り返した結果、もう大丈夫ということで無事退院。

「病院」という現場からイタリアを発信すると、
皆様がもっと、本質のイタリアに触れてもらえるかな?
と思い、これから数日間、病院の体験記を綴っていきますね。

私は、すっかり元気です!

この記事を読まれて、ご心配されませぬよう、お願いします!

取り急ぎ!

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2012年4月10日 (火)

只今、脱皮中

皆さん、今日は

シエナの聖美です。

ここ最近、更新が遅れていて、スミマセン。

只今、脱皮の真っ最中。

古くなった概念を脱ぎ捨て、新しい感覚が生まれようとしています。

古い概念とは・・・・

例えば、「かわいい」という目で物事を見る感覚。

イタリアでは、大人の会話に、「かわいい」という言葉があまり使われません。その代わりに、「ブラボー 優れた・偉い」とか、「ベッロ 素敵」という言葉が使われます。

そして、外見でごまかす、という感覚

具が貧弱なサンドイッチ、クリームの少ないシュークリーム、過剰なラッピングのギフトのように、中身がないくせに、最低限の努力でそれなりに見せるかける、といった考えは脱ぎ捨てたい。

43歳の春を迎え、今まで纏っていた感覚が剝がれていく。

羽が整ったら、少し違う価値観の方向へと飛び立ちたい!

道先案内人は、過去の人物に尋ねてみようかな?

身の回りにある素晴らしいことを見逃さぬよう、鈍行で行きたいので!

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2012年4月 1日 (日)

ヴィニタリー

ご無沙汰です!

皆様、お元気ですか?

シエナの聖美です。

移動と出張の多い3月でしたが、
4月は、シエナで呼吸を整えます。

先日、イタリアで最大級のワインの試飲会に行ってまいりました。

今年のワイン選びは、「響き」がテーマ。

口中で交響曲が響くような・・・
心に、思い出が響くような・・・

ワインと過ごす日を慈しみ深く思える、そんなワイン探しをしていたところ、自分でもビックリするような出会いがありました。

ワインの産地としては、とてもマイナーな
バジリカータ州。

偶然に迷い込み、「この州は関係ないわ・・・」とアンテナをオフにして通り過ぎようとしたその時、素朴で目立たぬテーブルに、何故か足が向いたのです。

試飲してみると、なかなか美味しく、値段も良心的。

「家族に捨てられた子供、精神的に障害を抱えた170人の少年が修道院で共同生活を営み、そこで作られているワインなんです。儲けを目的としているのではないのです。少年達が自信をつけて、自立に繋がることが目的です」 と説明してくれたのはアントネッロさん。

彼からの誘いを受け、
近々、この施設を訪ねてこようと思います。

心にも響くこちらのワイン、
秋のワインリストで皆様にご紹介です!

お楽しみに。

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