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2012年1月

2012年1月30日 (月)

逆流もいいね

皆さん、今日は

キヨミさんの愛猫、ティティです。

「キヨミ、明日フィレンツェに行かない?戦争の被害にあったパレスチナの子供を書いた本の出版記念があるの。ステファニーも一緒よ!」

ブルブルっと携帯が振動し、
アリアンナからのメッセージが表示されました。

(パレスチナのこと良く分からないから、辞めておこうかな・・・・
NO NO ! 分からないから行ってみるのよ!)
と自分に言い聞かせ、「OK ! 」と返信するキヨミさん。

17時にアリアンナが勤める銀行で待ち合わせをし、
三人で会場に向います。

思いのほか、定刻より早めに到着。

会場には、ユダヤ人が迫害されている様子や、戦争裁判などの写真も展示され、裁判の証人たちの映像がモニターから流れています。

「キヨミ、分かる?」

既に会場に到着していたファビオの問いかけに、

「正直いって、よく分からない世界だわ。
何か1つでも知れたら、いいと思ってる」
と答えながらも、自分がとても無知であることを思い知らされます。

18時半。

著者、ミリアムさんの講演スタートです。

「これまで、沢山の子供達が犠牲になり、私は現場で憤りを感じてきました。罪のない子供達は結局、数字としてしか残らないんですね。昨日の死者は何人、今日は何人・・・・。せめて、この子たちが生きていた、という証をしたい・・・だから、本の書き出しは、子供の氏名、年齢、そして命を落とした状況の一覧から始まっています」

(この人、強い。使命感に掻き立てられている・・・)

外気は1度。

講演の終了と同時に、暖房のない部屋の寒さに気づきます。

「ねえ、どこに食べに行く?」

「ピザでいいんじゃない!」

「だったら、近くに、フィレンツェNo1の美味しい店あるよ!」

店内に入ると、熱気ムンムン。

オーダーを終えると、そう待つことなく、
溶ろけたモッツァレラチーズがプルプルと揺れるピザが運ばれてきました。

「ん~、美味しい!」とキヨミさん。

でも、隣に座るファビオは、
「ピザ職人、替わったな・・・」と納得がいかない様子。

「どうですか~」
通りがかりのウエイトレスが威勢よく問いかけると
「美味しい」 「美味しい」と答える中、
「私は、このピザ、好きではないわ!」
と、アリアンナが逆流のコメントを返します。

「ごめんなさい、私、グローセットの女だから、思ったことは口に出ちゃうの。この生地、柔らかすぎない?」

こう述べる彼女の表情はあくまでも自然で、
「抗議」というより、「素直な感想」そのもの。

対人マナーや社会の目を意識し、
「相手の気持ちを害さないように・・・」と、
自分の意見を内に秘める人が多い中、
本の著者ミリアムや、アリアンナのように自分の意思を発するイタリア女性から、何だか元気を吸い込む今日この頃です。

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2012年1月27日 (金)

義捐オリーブオイル 参加者募集

今日は

シエナの大多和聖美(おおたわきよみ)です。

お正月を過ぎると、寒さから逃げるように、
春へと小走りするこの時期、

こちら、トスカーナのシエナでは、3月11日に向けた
『義捐オリーブオイル』の準備が整いました。

昨年、沢山の日本の方と接する機会を持った
オリーブオイルの作り手、ファンチュッリ農園のエンリコとパトリッツィオが中心となって出来上がった『義捐オリーブオイル』の案。

聖書に、「ノアの箱舟」の話があります。

40
40夜続いた大洪水の後にノアが鳩を放つと、
とまるところが無く帰ってきます。

7日後にもう一度鳩を放つと、鳩は、オリーブの葉を加えて船に戻ってきました。

陸地の存在を教えてくれたオリーブの葉は、
幸せのシンボルでもあります。

昨年、津波の犠牲となった方に、新たな新境地を見つけていただきたい、という願いを込め、
シエナからオリーブオイル(40mlのミニボトル 2011年絞り 無農薬)を提供させていただきます。

ファンチュッリ農園から提供されるオリーブオイルを、
私とパトリッツィオで送料を負担し、日本に届けます。

オリーブオイルの小瓶には、シルビアちゃんが描いてくれたカードが添えられ、裏には、 
Mani Amiche per rinascere....
「復興のため、友達に手を差し伸べよう」
というメッセージと、参加したイタリア人のサインが記されています。

このオリーブオイル(40mlの小瓶)を利用して、募金活動をしてくださる方(レストラン関係者、お料理教室、カルチャーセンター等、人との交流の場がある方)を募集します。

集まった収益の寄付の先や結果など、こちらから尋ねることはございません。

kiyomisiena@libero.it  大多和聖美(おおたわ きよみ)
Silvia

「出来ることをやってみよう」 という気持ちでご参加いただける方、メールにてご連絡ください。

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2012年1月23日 (月)

キリギリスな私たち

今日は

KIYOMIさんの愛猫、ティティです。

どう見ても、ガラクタにしか見えないものでも、
彼にとっては独特の味わいと価値があるらしい。

「ねえ、パトリッツィオ、これ、いるの?」

本当は、黙って捨ててしまいたいけど
本人が同じ部屋にいる以上、しょうがない。

一応、彼に聞いてみると、

「勿論だよ!これは貴重なモノだぞ!」
と答えが跳ね返ってくる。

(どうして貴重なものが、こんなに埃かぶってるのよ・・・)

昨日、ごみ袋にポイしたはずのモノたちが、
今日は、澄ました顔して、棚の上にちゃんと戻っている。

こんな調子だから、アクアボッラの片づけは一向に進みません。

「おい、キヨミ。この部屋は俺に任せてくれ」

OK。じゃあ、私は隣でワインの棚を整理するわね・・・さてと、まずは要らないラックを上の階に運んで、
部屋をすっきりさせるか…」

ワインを収納していた木箱を1階から2階へと、何往復したことでしょう。

やっと全てを運び終え、ほうきと塵トリを取りに、
パトリッツィオのいる部屋に入ると、
シーンとした部屋で、彼は椅子に腰かけ、本に夢中です。

「キヨミ、見てみて、このワインのガイド。
昔のラベルの写真が載ってるよ~
これ捨てたら、もう一生、このラベルは見れないもんな~・・・・それにこの本、俺たちがデモに参加した時代の写真集・・・」

「ちょっと~、そうやって本を読み始めたら、全然進まないじゃないの!過去にばっかり浸っちゃて!
私は、未来に進まなくちゃならないのよ!」

その時、扉が開き、ピーノとガブリエーレが現れました。

「ボンジョ~ルノ~!皆さん、お元気そうで! おやおや、ダリオがいないけど、売っちゃったの?」とピーノ。

「とりあえず、ワイン!」とガブリエーレ。

パトリッツィオの仲間が現れた時点で、パトリッツィオの勝ち。

まじめモードの片づけは御開きです。

ストーブの周りに椅子を並べ、
68年のシエナの写真を眺める皆の瞳は、あの頃のような輝きを増します。

(そうだ、さっき、カセットテープが入った箱があったっけ・・・)

キヨミさんは、「68年」とボールペンで書かれたテープを選び、ボリュームを上げて懐メロを流すと、三人の男どもは、「オ~!」と歓声を上げて歌い出す。

「明日も、この周辺にいるんだ。だから、ランチに来るよ。何食べたい?」とピーノが尋ねると、

「ムール貝!」とキヨミさんは声を上げます。

「よし、じゃあ、俺、買ってくる。2キロもあれば、いいよな!」

アクアボッラらしく、店じまいの片づけも寄り道モード。

市は、今後、この建物を有効活用してくれる案を募集することになっているのですが、その公募も遅れているようです。

次の入居者が決定するまで、アクアボッラにいられる私たち。

計画性も大事だけど、

「どんな状況であっても、今を楽しむ」 

そんなイタリア人に生きる魅力を学んでいる、今日この頃です。

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2012年1月16日 (月)

レストラン「アクアボッラ」を卒業して・・・

今日は

KIYOMIさんの愛猫、ティティです。

大分、ご無沙汰してしまいました。

皆様、お元気ですか?

こちらシエナの生活模様はといいますと、
木漏れ日で日向ぼっこをしているような長閑な時間に包まれながらも、緊張感あるピーンと張った空気にさらされる毎日を送っています。

時間は遡り、12月31日。

2012年へのカウントダウンまで、あと5分。

「パトリッツィオ、乾杯のグラスの用意は出来てる?」

トイレから勢いつけて戻ってきたキヨミさんが叫ぶと、そんな彼女とは対照的に、パトリッツィオは、落ち着いた様子で口を開きました。

「俺に考えがあるんだ。2012年を迎えたら、電気を消さないか?アクアボッラの営業を消すんだ」

新年を「乾杯」のグラス音とともに賑やかに迎えるとばかり思っていた妄想にブレーキがかかります。

「・・・・なるほどね。賛成。じゃ、皆、配置につきましょう。私は厨房を担当するわ」

「じゃ、僕は客席」とダリオ。

「俺は、外看板を担当する」とパトリッツィオ。

2階の奥、ひんやりとした厨房で、パトリッツィオのカウントダウンの声を待つ僅かな時間、不思議なことに、コンロの前で、「ヤッテやる!」と自分の限界まで挑戦した自分が見えきて、涙が流れてきました。

「10・9・8・7・・・・・3・2・1! 今だ!」

「ありがとう」

体内に宿る全ての精神をこめて感謝を述べ、
厨房の電気を消して一階に戻るキヨミさん。

ダリオも一泊遅れて、階段から降りてきます。

「それじゃ、乾杯だ!お~い、ダリオ、こっち来いよ!」

パトリッツィオが呼ぶと、
「僕は、乾杯、いい…」と断りの返事をして、
思いっきり、鼻をかんでいます。

「あいつ、泣いてるな」とパトリッツィオ。

しばらくすると、ダリオも照れるように現れ、三人揃って、スプマンテで乾杯しました。

レストラン「アクアボッラ」は、2011年12月末日をもって、幕を閉じました。

その後はといいますと・・・・

パトリッツィオは、アクアボッラの棚卸しに追われ、
キヨミさんは、今日も、ワインの発送準備です。

ランチ時は、悪友、ピーノやガブリエーレがやってきて、ギターを弾きながら、ワイワイ、賑わっている。

私たちは、一度、レストラン「アクアボッラ」を卒業しましたが、感覚としては、付属中学校から同じ敷地内にある高校へと進むような感じでしょうか?

僅かな春休みを過ごした後、また、気持ち新たに同じメンバーでスタートします!

「エノテカ」「レストラン」というINの世界で過ごしてきた私たち、次の学校では課外授業が多くなりそうです。

さて、唯一、環境が変わったと言えば、ティティ。

アクアボッラからキヨミさんのアパートへと引っ越し、
5つ星ホテルのような暮らしを満喫しています。

おっと、いけない・・・、そろそろ家を出る時間!

これからアクアボッラに立ち寄り、ワインの発送に行ってきますね!

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2012年1月12日 (木)

復帰しました!

皆様、今日は!

ご無沙汰しております。


お正月を迎えてすぐ、
私もパトリッツィオも、熱が出てダウンしてしまいました。

しっかりと休養をとったお陰で、昨日からすっかり快調です!

溜まってしまった仕事も、ようやく終わりが見えてきたところで、明日からブログ更新しますね!

やはり、健康第一です。

では、明日までには、またお目にかかりましょう!

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2012年1月 1日 (日)

今年も、宜しくお願いします!

皆様、あけましておめでとうございます。

昨年は大変、お世話になりました。
今年もどうぞ、宜しくお願いいたします。

さて、お正月には抱負めいたものを掲げたくなりますが・・・

2012年、ブロードのような年にしたいと思ってます。

大なべに入れられタマネギ、セロリ、ニンジン、鶏肉、骨たち・・・

それぞれ違う味覚を持つ者同士が一つの鍋に入れられ、塩・コショウで薄く味つけされながら時間をかけてコトコトと煮込むうちに、美味しいブロードへとゆっくりかわっていく。

何も、特別な演出や主張をすることなく、ただ、一緒に時間を過ごすだけ。

ブロードを仕込んでいるうちは、美味しさは直ぐには漂ってこない。

それはまるで、
人と会った瞬間に、自分がどこかで相手に期待しているような、手ごたえを得られず、「何か違う」と、早とちりをしているような段階。

ブロードが優しい味に仕上がっていることに気付くのは、ずっと後のこと。

そして、ブロードはそれ自体も美味しいのですが、色々な料理に使用されることで、自分でも思いもしなかった様々な料理に形を変え、幅広いシーンで用いられる可能性を持っている。

『今を楽しみましょう』というけれど、

今を楽しもうと自分に言い聞かせ、無理やり、前向きな精神を叩き込むと窮屈に感じる。

でも、『今、こう過ごしていることが、後に美味しくなる!』と考えると、素直に納得できる。

年を重ねるごとに、それまで信じていた価値観がポロっと脱皮をします。

抜け殻を振り返ると、
社会に認められたいとう、競争意識をまとった切望感がくたびれて横たわっている。

皆様と一緒に時間を過ごす、そこから美味しい人生が作られる、ということに気付いた2012年の朝。

自分から抽出される栄養分や味を新鮮に保つことも大事です。

2012年も、苦いこと、しょっぱいことが起こるでしょう。

でもそれは、味を引き締めるための香辛料をふり掛けた瞬間であって、美味しさは後でのお楽しみ、と念じながら、皆様と一緒に、ありのままの時間を過ごしていきたいと思っています。

2012年、皆様におかれましても、いい味が出せますように!

今年もどうぞ、宜しくお願いします!

シエナ/大多和聖美(おおたわ きよみ)

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