そっと乾杯!
皆さん、今日は
キヨミさんの愛猫、ティティです。
シニョール ブロージとシルビーが食事を終えて2階から下りてくる。
キヨミさんはこのフランス女性のシルビーが苦手なのです。
バールのカウンター前で話しを続ける彼らに関わらぬよう、隣の部屋に身を隠し、コンピュータに向って仕事をするフリをしますが、そんなキヨミさんの前にシルビーがひょっこりと現れました。
「仕事、忙しいの?」
「ン~、ワインの注文が多い時期だからね・・・
ところで、クリスマスはパリに戻って祝うの?」
「ノン。今年は母が亡くなり、続いて10月には弟も他界したわ。私、父親のこと知らないで育ったでしょ。
弟が唯一の身内だったのに・・・
パリの家も売ってしまって、故郷には何も残ってないの。
こんな気持ちでクリスマスを祝う気になれない・・・」
知らなかった。
100回以上、シニョール ブロージに連れられてシルビーは来店しますが、
パトリッツィオが勧めるメニューに一切同意することなく、定食並みのお手ごろ価格で提供する食事に対し、
星付きレストランの客気取りで、我ままに振舞う彼女。
プライドが高く、思ったままを口に出しては
テーブルでの関心を独占したがる彼女に対し、
(きっと、アジア人に対しても偏見や差別を持っているのでしょうね)と勝手に想像し、彼女に薄い壁を感じていたのです。
そんな彼女が、
「私、一人ぼっちになっちゃったわ」とため息をつく。
「私、もう根っこが無いの・・・これからが辛いわ」
と呟いている。
知らなかった・・・・
「キヨミは、何年、イタリアにいるの?」
「来年で、13年目よ」
「13年!パトリッツィオ以外に、イタリアで友達はいる?」
「(友達って、親友のこと?)正直言うと、いないかな。
アパートでの一人暮らしにも慣れた。
私ね、本当は人に依存しやすい性格なのよ。
相手に受け入れられることが自分の存在価値みたいに思ってた。相手に拒まれる度に傷を追うくらいだったら、最初から一匹狼(一匹猫)でいたほうがいい。
そんな思いを背負ってややドライに生活するようになったわ」
会計を済ませ、パトリッツィオとの世間話にも飽きたブロージ氏がシルビーを呼びつけます。
「じゃ、またね」
キヨミさんと挨拶を交わすと、
待ちくたびれてブツブツ小言を漏らすブロージ氏に、
いつもの調子で、言い返している、そんな元気が逞しい。
「ねえ、パトリッツィオ。
今までシルビーのこと苦手だったけど、
スノッブな彼女がふと、本音を打ち明けた瞬間に、
距離がぐっと縮まったわ」
「そういうもんだよ。
だから、最初から人を決め付けて、距離を作らない方がいいんだ。
皆、友達になる部分を秘めているからね」
「そうね。でも、あなた以外にここイタリアで親友って呼べる人、いないわ」
「俺達は、もう、家族の絆レベルだよ。
それと他の人を比べたら駄目さ。
レーダだって、ジージーだって、エリーナだって、
他にもキヨミの友達、沢山いるじゃないか・・・」
それもそうだ。
前向き・優良印・・・等身大よりちょっと背伸びした、いい格好の自分をアプローチしようとしてたから、そんな演技に疲れてしまうことがある。
「ガブリエーレだって、昔と変わったよ。
今、あいつの言うことを年中聞いていると、正直いって、しんどい。若い頃は、一緒に過ごした野郎達だけど、昔のままの付き合い方を友達だと思う必要はないんだ。部分的に付き合えてれば、いいんだよ」
こんな話題を通じて、
心に、何か温かい誕生の兆しを感じる今日この頃。
クリスマスが近づき、
賑わいのボリュームがますます上がっていく中、
悲哀に溺れてしまわぬよう、踏ん張って立つのが精一杯で、お祝い気分になれない人も沢山いる。
次回シルビーがお店に現れたら、
是非、そっと乾杯したい。
「あなたの、これからの人生に、サルーテ(乾杯)!」
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