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2011年11月29日 (火)

変化

定休日前の月曜日。

この日のお客は、夜の2名のみ。

23時過ぎ、ゴミを詰め込んだ車にエンジンがかかると、
「明後日は、アクアボッラの最終日だ!」
とパトリッツィオが叫び、その後、沈黙が漂います。

それまで塞いでいたものが破れ、
そこから感情があふれ出す。

「有難う!またね」

「じゃあ、また!キヨミ!」

優しい声で挨拶を交わし、車から降りると、
もう我慢しきれずに涙が溢れ出す。

アクアボッラの賃貸契約は今年一杯。

レストランは閉めよう、と決めていたものの、
いざ、その日を迎えると、
過ぎ去った思い出が無理やりに美化され、気流欄に巻き込まれてしまう。

年々、お客が減っていくレストラン。

お客様が来ない日でも、暖房をつけ、夜の22時まではレストランにいなければならない毎日。

しかし、お客様が沢山入ると、深夜まで仕事をした翌日は、パトリッツィオの手術した足が悪化し、私はというと、輸出、その他の仕事が間に合わず、ジレンマに立たされます。

2001年からパトリッツィオとエノテカで5年働き、
販売についてのノウハウを身につけました。

2006年からパトリッツィオとダリオと共にアクアボッラのレストランで働き、コミュニケーションについて、
肌で感じるものを得ました。

そして今、これからやりたいことが見えてきた。

田舎の叔母さんから送られてきたドロのついた野菜のように、

トスカーナから送られたものを手にとった時、
送り主、生産者の温もりが感じられ、豊かな気持ちになれるような、
そんなコミュニケーションと仄かな幸せを感じてもらうための仕事がある。

それは、まるでオペラ劇場のよう。

プロの演奏者は毎日の練習で磨いた技術と感性をもって、演奏をし、それに感銘をうけたお客様は惜しみない拍手を送り、その記憶は生き続ける。そして、奏者と観客を結びつけるために働く影の関係者がいる。

そんな、三者の気持ちを結ぶように、今ある仕事を拡大していきたいのです。

(それにしても、よく、ダリオに罵声を飛ばしたな~)

あんなに憎たらしいと思ったダリオの癖が、
今日は、コロッと愛おしさに変わっている。

「あ~、レストランの仕事から離れてせいせいしたわ!」
と思えるなら、スッキリ感があるのに、
仲間同士の喧嘩と、たわいのない冗談、そんな普通の空気が消えていきそうで、まだ、その空気を吸い続けたい衝動に駆られる。

変化。

これから悪い状況になるのではないか?という不安はある。

しかし、成長には変化がつきもので、それは、方向転換のチャンス。

昨日と同じことを明日も繰り返すのは楽だけど・・・

でも、私達はチャンスに恵まれたようです。

これからも、パトリッツィオと一緒に仕事をしていきます。

もしかしたら、ダリオも一緒かも!

「キヨミ、私は文化担当だからアクアボッラの契約の件は直接関わっていないけど、どうやら、副市長が10日以内にアクアボッラに訪れ、もう1年、契約を延長してはどうか?という提案に行くわよ!」

友達がこっそりと、内情を教えてくれました。

もしかしたら、もう1年、アクアボッラを拠点にするかもしれません。

その場合は、レストランというカテゴリーではなく、エノテカとして、ワインバーに変身します。

今年の夏から秋にかけて、毎週のように日本からお客様がレストランに訪れてくれました。

「え~、アクアボッラに遊びに行こうと思っていたのに・・・」という方、ご安心下さい。

アクアボッラに代わり、パトリッツィオと一緒に、ワインやオリーブオイルの作り手宅に伺い、楽しいひと時を過ごしましょう。

農園には、シエナの伝統の香りがプンプン漂っています。

まだ、具体的なことは決まりきっていませんが、
私達のコンセプトはハッキリしているので、
こんな不況でもしっかりとしていられる。

この状況を作り上げてくださったのは、日本の皆様の応援のお陰です。

ありがとうございます

これからも、どうぞ、宜しくお願いいたします!

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