猫の家で一呼吸
キヨミさんの愛猫、ティティです。
「お断りの電話、しちゃおうかな?
このまま原稿を書き続けたいし・・・」
今日は木曜日。
猫の家で虚勢手術が行われる日で、
キヨミさんはボランティアに参加する日です。
(このまま仕事を続けることも出来るのよ!)
と内なる声がチラつきますが、
バスの時間を意識し、
外出の準備をしながらそんな可能性を揉み消します。
シエナの市と保健所とボランティアによって運営される猫の家。
交通事故にあった猫、
街をさ迷う、飼いならされた猫、
捨てられた子猫、
他界したお婆さんに飼われていた猫などなど・・・・
様々な事情をしょった猫が運ばれてくる施設。
「じゃあ、キヨミ、後は宜しくね」というチンツィアに続き、
「私も、もう行くわね?」とカルラが去った後、
10月からボランティアに参加したばかりのラウラとキヨミさんの二人が残されました。
「この猫ちゃん、街中のお店に迷い込んできたらしいのよ」とラウラ。
「そう・・・ほら、グルグルと喉鳴らしてる・・・・
人間と一緒にいたいのよね~、
出来ることなら沢山の猫を引き取りたいけど・・・
アパートでの一人暮らしだから、猫の世話に責任もてなくて・・・・」とキヨミさん。
すると、
「私もよ。入院したら、猫の世話が出来ないもの」
とラウラがポツリ、述べました。
「入院?」
「そう。私、5年前に乳癌が見つかってね。
今でも3ヶ月ごとに検診に行ってるの。
それまでは働いていたのよ。
カンポ広場でウエイターとか、美容院とか、工場でも働いたわ。でも、病気になってから働くの辞めたのよ」
そんな不安をかき消すかのように、
50代のラウラはフェイスブックを覚え、
猫の里親探しに一生懸命です。
「今朝、仕事を続けたかったから、ここに来るの辞めようかな?って思ったけど、やっぱり来て良かったわ!」
「そう。ここの猫ちゃんと触れると、癒されるのよね!」
とラウラ。
昨日、施設に置きざりにされたお年寄りの猫は、
まるで、随分長くから住んでいるかのように、
他の猫と仲良く日向ぼっこをし、
施設内では、
事故で片手を失った猫が、カーペットの上でゴロゴロしています。
忙しいからといって仕事に没頭すると、競争原理と欲が働き、(もっと沢山、もっと有名に・・・・)と豊かさを求めながらも、経済社会の価値観に陥り、気付くと孤独になってしまう。
だからこそ、
それぞれの人生模様を肌で感じられる猫の家に通い、
共感と感受性を養う今日この頃です。
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