イタリア 素顔のスローフード
今日は
キヨミさんの愛猫、ティティです。
「ダリオ~、ダリオ~」
「何、キヨミ~?」
「ワイン、持ってきて~
ラグー(ミートソース)仕込んでるのよ~」
「OK~」
熱帯度までヒートした厨房、
背後で響く換気扇にかき消されぬよう、
キヨミさんは叫びます。
「オーイ、ダリオ~、やっぱり要らなーい!
食材庫にあるワイン、使うことにしたから~!」
「了解~!」
地元客と近隣のホテル客が訪れるだけのアクアボッラ食堂。
目立つこともない普通の食堂ですが、
車で10分も走ると、世界に名の知れるキャンティクラッシコのワイナリーに辿り着きます。
アクアボッラ食堂のテーブルワインは、
キャンティクラッシコの作り手FELSINAが手がける赤、サンジョヴェーゼ種。
テーブルワインとは思えぬほど果実味が生きたこの赤ワイン、料理の仕込にも惜しみなく使用しますが、
今回は、棚に置かれっぱなしにされた、モンテプルチャーノ種のテーブルワインを使うことにしました
ラグー(ミートソース)他、トリッパ、キノコソースの仕込みを終えると、時刻は18時を過ぎたところ。
涼しい風を受けながら、外テーブルで3人、夕食を迎えます。
「ご苦労様、キヨミ どう? 美味しく仕上がってる?」
とパトリッツィオ。
「うん。今回のラグーはね、いつものに比べると、
ややサッパリテイストなのよ。
煮込む際には、フェルシナの赤ワイン
(サンジョヴェーゼ種)を使ってるじゃない?
でも、今日は違うワインを使ってみたの。
そのせいかな?ややライト!暑いから、いい感じ!
でも、明日仕込む猪のラグーは、いつもの赤で煮込むわよ。猪は、重みのテイストで仕上げたいからね」
「そういえばキヨミ、あのトマト、どうした?」
「そうだ!直に持ってくるね!」
パトリッツィオが農家から手に入れたトマト。
(やはり近隣の農家で採れたトマトは甘くて美味しい!)
と言いたいところですが、
色づきも薄く、酸味・甘みも控えめ。
同じシエナの土地で育つトマトにも、
熟れたチェリーのように甘いものもあれば、
そうでないものもある。
どんなにテクノロジーが進化しても、人間は気象条件をコントロールすることは出来ず、また、同じ土地で育つ作物の違いを予知することは出来ません。
生き物であるからには、それぞれの環境から影響を受け、個性を持つ。
「メニューの味は統一されていないと駄目なんですよ。
その都度、味が変わると、お客様に指摘されてしまいますからね・・・
オリーブオイルにしてもそうです。
出来れば、毎年、同じ味が好ましい」
以前、日本でチェーン展開するレストランのシェフが言った言葉を思い出す。
お客様の満足を保証するため、
安定した味を供給することが必要とのこと。
一方、画一化されることが苦手なイタリア。
そんな地で発祥したスローフード。
トマトに向かい、
「あなたは、どんなアイデンティティを持ってるの?」
「どんな土地で、どんな気候条件で成長したのかしら?」
と想像してみる。
そして時には、
「なるほど~、だから、こんなに形が悪いんだ!」とか、
「だから、いつもに比べて、甘さが控えめなのね」
と、彼らの個性に歩み寄ってみる。
管理された規律社会に生きるから、
時々、デコボコした食材を通じて自然を感じてみたい!
自分の中で、プラス アルファの味付けが加わり、
食との付合いがまた深まりそうです!
では、Buon week end (よい週末を!)
↓仕込んだラグーとダリオ
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