野花
今日は
キヨミさんの愛猫ティティです。
レストランでランチの仕事を終えると、
キヨミさんはバスに乗り込みエリーナを訪れます。
(ピンポーン!)
チャイムを鳴らすと、一拍の間が空いて扉から顔を出すエリーナ。
「チャオ、キヨミ!」
「チャオ、エリーナ・・・・
ワ~ォ、今日はこれからお出かけ?」
膝丈の黒いスカートに、網模様柄のストッキングを合わせ、髪を一つにまとめた彼女からは、いつにも増して気品が漂います。
「今日は来客が続くから、気持ちもスペシャルなの。
そんな気持ちに合わせてお洒落してみたわ!
午前中、T夫人がいらしたのよ。
シエナの市役所に勤める彼女は今度、選挙に出馬するんですって。
シエナの合唱団にも所属する彼女は大の猫好き。
そんな彼女の提案で、また今年も猫の家のために、
コンサートが開かれるのよ!」
(ふ~ん)と耳を傾けながら、
キヨミさんはT夫人の名前を手帳に書き込みます。
翌日、猫の家に訪れると、
既にチンツィアが施設にいる猫たちの部屋を掃除してました。
「ねえ、チンツィア、T夫人、知ってる?」
「・・・・?」
直にはピンとこないチンツィアに、改めてフルネームを読み上げます。
「あ~、彼女ね!」
キヨミさんは猫のボランティアに通うようになり、
ある程度の人とは顔見知りになりましたが、
T夫人とは施設で顔を合わせたことがありません。
雨の日も、雪の日も、
毎日、施設に通って猫を世話するのはチンツィアです。
2月に旦那様を癌で失い、
病気のお母様を看病し、
教員の仕事をしながらも、猫の施設の任務を全うする彼女。
道端を歩くと、
雑草に隠れながらも、健康的に咲いている花がある。
同じ花でも、ラッピング次第ではイメージアップするかもしれない。
でもあえて、雑草に囲まれ、注目されたがらず、
地に根を張っている自然体の花が大好きです。
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