ズービン・メータ
皆さん、今日は
キヨミさんの愛猫、ティティです。
「オーイ、キヨミ~ ・・・・」
パトリッツィオが何やら叫んでいます。
「なに~?何か言った~?」
「今晩0時から、RAI放送でズービン・メータのコンサートがあるぞ~!」
「ワ~オ!本当~!」
キヨミさんはズービン・メータが大好き。
4月10日に東京・上野で行われたチャリティーコンサートの模様が先日教育テレビで放映されましたが、
ここイタリアからはNHKを見ることは出来ません。
そこで、放映時間に千葉の自宅にスカイプで連絡を入れ、コンピュータのカメラを通じてテレビを眺めました。
シエナの隣街、フィレンツェでは彼の公演が催されていますが、どの日も満席。
近そうで手が届かない、
そんな彼のコンサートを今晩テレビで観れるなんて!
学生時代、上野文化会館の資料室によく足を運び、
音楽と触れていました。
ある日、レーザーディスクを手に取ると、
そこには、若かれしズービン・メータが巨匠ホロヴィッツと共にラフマニノフの曲に合わせ、幻想的な世界を創造し、その威厳ある佇まいにすっかり惚れてしまいました。
「ねえ、パトリッツィオ、ズービン・メータの若い頃の映像、見たい?」
「お~、キヨミ。もうズービンメータの話はよしてくれよ。こうしょっちゅう聞かされたら、うんざりだ!
70半ばで太っちょで、髪も薄くなってる親父さんのどこがいいんだ!」
他の男性の魅力を聞かされ、面白くないパトリッツィオ。
この日以来、キヨミさんはズービン・メータの話を控えてますが、パトリッツィオのほうから、情報をもちかけてくれます。
さて、イースター休暇に突入した金曜の夜、
21時を過ぎてから突然お客様が入り始め、静かだったホールはあっという間に満席となり、丁度0時ごろに静けさが戻りました。
「お~、大変、大変、ズービン・メータのコンサートが始まるぞ!」
慌ててテレビをつけるパトリッツィオ。
チャンネルを合わせますが、
画面に映るのは砂嵐と雑音のみ。
「畜生ッ!キヨミ、家に帰るしかないよ。アンテナを調節しながら苦労してコンサート鑑賞するの、可哀想だ。
送るから、早く身支度して!」
・・・・
「何、のらない顔して?」
「ズービン・メータが見れるの嬉しいけど、一人、部屋でポツンとテレビ観るの、ちょっと寂しいのよ」
「お~、そうだよな。すまん、気付かなくて」
パトリッツィオがテレビのアンテナをあちこちに動かすたびに、画面の砂嵐はは勢力を増したり、弱まったり。
「もう止めた。上に行こう。上だったら電波が届く」
そう言うや否や、コンセントをはずし
テレビを抱え階段をあがると、テレビを急いでセッティングしてくれました。
2階では、嘘のように画面が綺麗。
3人で集中して働いた夜のレストラン。
皆、疲れているのに、
パトリッツィオもダリオも、キヨミさんの楽しみを優先してくれます。
「ありがとう」
ズービン・メータの指揮、コンサート会場の教会のフレスコ画などを食い入るように見つめながら聴くミサ曲。
奥の部屋からは、ダリオがお皿を洗う音が、
そして下ではパトリッツィオがグラスを洗う音が心に響きます。
日本人として、一致団結して働くことが美徳であると信じてきました。
それに比べて個人主義のイタリア人。
働くことより、(楽しむこと)を優先する彼らの考えは、
ただのエゴイスティックな快楽主義に基いているわけではないのだ、と気付かされたイースターの夜。
国ごとに国民性の違いはありますが、
愛情が感じられるコミュニティーは
それぞれ、美しいです。
おまけ(若い頃のズービン・メータ)
http://www.youtube.com/watch?v=8gMRv5dSTi0&feature=related
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