ご近所さん
皆さん、今日は
KIYOMIさんの愛猫ティティです。
トントントントン・・・
トントン、トントン・・・
ラウラの家のドアをノックするKIYOMIさん。
ノックをし続けても、誰も出てきてくれません。
トントントントン・・・
トントン、トントン・・・
ドアノブをそっとひねると、扉が開きました。
「ブォナセーラ!、kiyomiです。ラウラ~、いる?」
すると、廊下の奥から声が届きます。
「誰よ~、ノックしてるの!」
「私よ~、キヨミ」
「あら!キヨミなの? ごめんなさいね、ここ暗いでしょ。玄関の電気が切れちゃってるのよ!どうしたの?」
「実はね、オリーブオイルを買い忘れちゃって・・・
このコップに少しだけ分けてくれないかしら?
今、友達が泊まりに来てて、いざ、食事を作る、という時に、オイルがないことに気付いたの」
コップと一緒に、冷蔵庫にあったオレンジジュースを差し出します。
「あら、気を遣わないでいいのよ~!」
「有難う。でも、何かと交換すると、私も落ち着くの・・・」
キヨミさんの持ってきたコップを、息子のガブリエーレ君が受け取ると、緑色に光るオリーブオイルをなみなみと注いでくれました。
「これ、サルデニアのお婆ちゃんから届いたオリーブオイルなんだ」「そうよ、だから、特別に美味しいのよ!」
夕食を準備するラウラの周りには、息子のガブリエーレとお姉さんのジェッシカがいて、「何、何?」と言いたそうに、太っちょの猫2匹もやってきました。
「こんなに注いでもらっちゃって、悪いわね。本当にありがとう」
「いいのよ!」
皆の笑顔とオリーブオイルを受け取り、
友達、Kちゃんが待っているアパートに戻ります。
「オリーブオイルをうっかり忘れちゃったけど、何か抜けていたほうが、いいみたい!お陰で、ラウラにおすそ分けしてもらえたわ!ありがたい!」
子供の頃、夕暮れ時に、こういう交流があったことを思い出します。
「スミマセン、お醤油、ちょっと分けてもらえませんか?」
ドキドキしながら隣の家のチャイムを鳴らし、自分の言うべきことを伝えると、「あら!」と明るい笑顔で快く対応してくれる叔母さんに心が躍ったあの瞬間。
「沢山作ったから、もし良かったどうぞ?」といって、
お鍋を持ってくるご近所の方。
「あら、スミマセンね~」と受けとり、いただきもののおかずをお鍋からお皿に移し変えると、我が家の台所にあるものをお鍋に入れて、手渡すお母さん。
コンビニエンスストアーができてからでしょうか?
夕食時にご近所の方がチャイムを鳴らす、というシーンはすっかり消えました。
便利と引き換えに、消えていく習慣がある。
便利がない田舎の暮らしで、何か、困ったことがあったら、それは、昔の良き時代を思い出せるチャンス!
ちょっと緊張する指先で、チャイムを鳴らしてみよう。
スマートに一人完結して生きるより、
生活が美味しくなるような気がする。