« 美味しさのコツ | トップページ | 世界は俺のもの »

2010年8月24日 (火)

バッカスの一件落着

今日は

ティティです。

パトリッツィオがkiyomiさんにある新聞記事を読み上げます。

「・・・なんだってさ、信じられない家族の絆だよな」

眉間に皴を寄せるkiyomiさん。

「ねえ、もう一度、始めから一文一文、読んでくれない?意味が読み取れないのよ」

今日の喧嘩はこの一言から幕開け。

「ありえないだろ?10年以上イタリアにいながら
この記事が理解できないなんて」

「一つの単語が分からなくて、内容が繋がらないのよ」

kiyomiはいつも楽ばかりして、知らない単語を聞き流しているから、そういうことになるんだ」

「何言ってるのよ。あなただって、フランス語がしゃべれるって言っておきながら、実際にフランス人が来ると会話が通じてないじゃない。
私の外国語能力が著しく低いんじゃないわよ!
それに何よ!私が楽しているなんて、非難して。
こうして知らない単語を覚えようとしているんじゃないの。すんなり教えてくれればいいものを、すぐに癇癪起して!」

kiyomiは1ヶ月のうち、1日だけは明るくて、残りは問題だらけだ。
意地悪だし、キツイし。俺は安らがない。
問題っていうのは、今朝のようにバールの冷蔵庫と水道がいっぺんに故障すること、これが問題なんだ。
Kiyomiには問題がないはずだろう?」

その言葉を聞くや否や、
kiyomiさんは仁王立ちをしてソファーのパトリッツィオを睨み付けます。

「もう、我慢しないわよ!
あなたとの口論を避けたくて、仕事の話はしないって決めたの。そして落ち込んだ時も甘えないって決めたの。
今までだってアパート探しや滞在許可証の申請、盲腸の入院手続きも一人でやってきて、何でも一人でやることが自立だと思ってきたけど、自立とは精神的なことを言うんだ、ってあなたから教わったのよ。
でも頭で分かっていても気持ちは無理してるからぎこちない。
そんな状態では私がポジティブに前に進めない。
私の問題はそういうこと」

そういいながら、kiyomiさんは段ボールに私物の本を次々投げ込み始めます。

「問題なのはアンタの方よ。
私、他所では人付き合い上手くいってるし、
仕事だって、アンタに頼らなくても進行を務めてる。
あんたから、〈問題ある女?意地悪?ヒステリー〉なんて言葉を浴びる日が続くようだっから、他の地で発芽して成長するわよ!私は私に誇りがあるんだから!」

そんな矢先、老夫婦が店に入ってきました。

「ボナセーラ。誰か居ますか?」

「誰も居ませんよ~」

こんな時でも咄嗟の冗談で応えるパトリッツィオ。

「閉まってるんですか?」

冗談を真に受ける老夫婦はアイスクリームを注文しました。

そして、老婦人は店内の棚にあるエプロンに触れています。

「この生地、水を通さないから服を汚さなくてすむわね~」

80代と見られる老婦人は、たたんだままのエプロンをカウンターに載せます。

そんな買い物に動揺するパトリッツィオ。

「あ~このエプロンは、お勧めできないですよ」

「あら、どして?」

「ダヴィデの絵なんです」

フィレンツェにはミケランジェロの「ダヴィデ像」 があります。

その男性のヌード姿の彫刻の顔の部分を除き、
裸体部分をエプロンにプリントしたお土産がコレ。

男性の部分がバッチリのユーモアエッチ商品です。

観光地の店では必ず見かける定番エプロンですが、
この老夫婦はパトリッツィオの説明の意味が分からず、「はあ?」と曖昧に頷きます。

「それより、こっちのエプロンがいいですよ。
お菓子の柄のね」

「でも、この生地だと水を通してしまいそうだし・・・・」

「負けときますから」と強引にお菓子柄のエプロンを勧め、二人を見送ります。

そんなやり取りと聞いていたkiyomiさんは可笑しくてたまりません。

「エプロン買うのに、サイズも柄も確かめないのね?
折りたたんであるまま手にとって!」

「もう、焦ったよ。
冗談も分かりそうも無い真面目なおばあさんの前で、
あんな柄広げて見せる訳にはいかないだろ?」

「もしかしたら良く見えないかも知れない。
あのエプロンしたままで近所にゴミ捨てに行かれたら、たまらないわよね!」

「そうだよ!皆、(どこで買ったんだ、こんなエプロン)って聞くだろうに」

「アクアボッラ!」

大笑いしている最中、
ダリオ君が2階から降りてきました。

「さっきまで、二人の喧嘩声が聞こえたと思ったけど・・・・」

「そうなのよ。いろいろあるのよ」

Kiyomiが癇癪起こして、また本をまとめて俺達を見捨てようという時に、老夫婦が店に入ってきたんだ。
アイスクリームありますか?って」

「その後、ダヴィデのエプロンを買いたがるから、
もう可笑しくって!」

キョトンとするダリオ君。

その脇では、ワインの神様バッカスが
「やれやれ、一仕事終了」と微笑みます。
054_small
062_small 

|

« 美味しさのコツ | トップページ | 世界は俺のもの »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。