幸せの住み家
今日は
ティティです。
アクアボッラには、2階席のほかにも屋外席があります。
この季節は雨でも降らない限り、皆、外でお食事。
入り口に近いテーブルに腰掛け、新聞を広げ、煙草をふかし、そして、両脇のテーブル客との会話を楽しむパトリッツィオ。
「じゃあ、また!」と去っていくお客様に、まるで久しぶりに会った友人と別れるような情を感じます。
この「微かな情」を感じる日々に、とても幸せを感じるのです。
初めてアクアボッラに訪れたローマのお客様とは動物愛護団体の話で盛り上がり、
艶々した小麦色の肌で現れる常連客からはバカンスの話を聞き、
里帰りした若い女医からは家族の絆の話題になり・・・・
競争の激化で、あちらこちらのお店が創意工夫をし
他店との差別化を図るこの時代。
「情の交流」が見事に取り残されてしまっている故に、
消費者は、より新しいもの、よりお得なもの、より珍しいものへと一過性の刺激を追い求め、あちこちに張り巡らされたコミュニケーションの場に身を置いていながらも、心は真の豊かさを得られず、密かに疎外感さえ感じています。
ここ、シエナの田舎にポツンとあるアクアボッラ食堂。
全然有名でもなく、毎日繁盛しているわけでもなく、
儲けも食べていくのがギリギリなほどですが、
どんなに有名で華やいだレストランよりも、この食堂に誇りを抱くkiyomiさん。
かつて、パトリッツィオに対して、
「何て、戦略的な能力に欠けてるのかしら?」
と非難したこともありました。
しかし、同じ規格の高層マンションが立ち並ぶ街に、
風が吹き抜け、虫の声が聞こえる空き地がひっそりと在るように、情の交流があるこの小さな食堂を愛おしく感じるのです。
このことに気づいてから、
今が幸せなんだ、ということを知らされる今日この頃です。
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