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2010年7月

2010年7月30日 (金)

そのまんま女

今日は

ティティです。

「もう、食べる人、いないかしら?」

大皿に少しずつ残った料理を皆に勧めるkiyomiさん。

「私、もうお腹一杯」「私も、もういいです」
と皆のつぶやきを確認すると、
「じゃ、私が!」といつものように残った料理を片っ端から平らげます。

kiyomiはナナ(パトリッツィオの愛犬)と同じ。
皆と食事する時は一応控えめにしてるけど、
最後に、もう誰も食べないと分かったら遠慮なく食いつくんだ」
とパトリッツィオは得意気に説明します。

「スペインではね、レストランに招待する代わりに服をプレゼントしたほうがいい、という格言があるの」

「イタリアにも、同じ言い回しがあるよ。イタリアの場合は、服の代わりにコートという言葉が入る」

大食い者をレストランに誘うと勘定が高くつくので、
洋服をプレゼントして、
「この服を着て、レストランにでも行っておいで!」
としたほうが安上がり、という意味のフレーズです。

「でもね、私、今晩からダイエットしなきゃならないの」
話題の流れに沿わないkiyomiさんの発言に、
テーブルの皆は呆れ顔。

9月に、友達が教会で挙式するのよ。
そこで保証人を頼まれたの。
10年前の服を試着してみたら、案の定、ピチピチ。
手術台で医師がするゴム手袋、とまではいかなくても、歩くサラミみたい」

昔、女性の体は滑らかなラインだと思っていました。
しかし、40歳を過ぎた女性のラインは、あちこちにポッコリとした丘があり肉々してます。

「でもね、結婚式が終わった翌日からは、食べまくるわよ~!」

それから数日後・・・

「あれ、kiyomi、ダイエットするんじゃなかったの?」
とパトリッツィオ。

「いつものことなんだけど、ダイエットする、と決めた瞬間から凄い勢いで誘惑のセールスが迫ってくるのよ。(満足してないんでしょ、だったら、コレ食べる?アレ食べる?)って。だから、ダイエットしないことに決めたの。それがダイエットに繋がるのよ!」

イタリアに来てから、めっきり洋服を買わなくなりました。
毎月の化粧品代なんてゼロ。
夏のこの時期は、日焼けしたその風貌から、どこかの東南アジアの人、と見られますが、それも結構!

イタリア人にとって魅力的な人間とは、
「話題のウィット」と「快活な生きた表情」なのです。

イケメンシェフとか、美人アナウンサーとか、綺麗すぎる議員などなど・・・・

日本では、容姿への執着が強く、そのようなタイプの人々を羨望の眼差しで崇める傾向がありますが、
イタリアにいるうちは、そのまんま 野生的に生きます!

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2010年7月28日 (水)

出勤通路

今日は

ティティです。

数日前の猛暑が遠のき、
カラッとした空気が肌に気持ちよい夏日が続いています。

こんな日は、散歩が最高!

Kiyomiさんの家からアクアボッラまでの道のりをご紹介しましょう。

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kiyomiさんの住むアパートを出て

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葡萄畑の脇を横切り

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小川の脇の小路を渡るとアクアボッラへ到着

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2010年7月26日 (月)

叔母さんの幸せ

今日は

ティティです。

一昨日から2日連続で、スペイン人のチュースと娘のマルタちゃんがアクアボッラに訪れてくれました。

パトリッツィオの家族と30年以上の付き合のあるチュースは、すっかり親戚のようです。

「スペインでね、今、マルタが見てるテレビ番組に日本人のお母さんが出てくるの。その名前がKIYOMIっていうのよ。それもあって、あなたに興味津々だったわ。
お土産のシャツも、マルタが選んだのよ!」

丸い体格のマルタちゃんは11歳。

好奇心旺盛の彼女は、厨房からお皿を運んでウエイトレスをしたり、ピアノに合わせて歌って踊ったり、川で魚を見たり・・・

ハイジのように素直で明るく、彼女のユーモアで大人たちは長閑な午後を楽しみました。

別れ際、タックルして強く抱きつかれ、再会を強く約束した瞬間には、温もりと同時にちょっぴり寂しい味が・・・

「子供にとって、kiyomiは凄く魅力があるよ」

とパトリッツィオ。

「そうかしら?それはあなたでしょ。私は特別ではないわ」

kiyomiには、子供のままの部分が残ってるんだよ。

この前、シルビアだって、kiyomiの姿を見るなり、
思いっきり走って出迎えただろ?」

「そうね。あれ、嬉しかった!」

よく、子供が好きです、という人がいますが、
Kiyomiさんは、そういうタイプではありません。

ワンパク盛りの子供が猛威をふるって自己を主張する姿や、大人の関心を惹くための悪戯に直面すると、

ストレスを貯めてしまいます。

でも、まっすぐに飛び込んでくるマルタちゃんやシルビアちゃんを愛おしく感じ、今まで味わったことのない、
(叔母さんであることの幸せ)を覚える今日この頃。

「もしもし、叔母さん?シエナの聖美です」

「あら!聖ちゃん、何かあったの?」

「いえいえ。ただ声が聞きたくなって、電話しちゃいました」

「まあ!」

「叔母さんには、何か頂いた時のお礼とか、
お正月とか、特別な時にしか話をしないけど
夏のせいかしら?
何だか、遠い昔の思い出が近く感じられてね。
覚えてますか?
昔、お古の洋服、段ボール一杯に送ってくれたでしょ。
あの時、私達のことを思って、詰めてくれたんだな、って今ごろになって、感謝してるんです・・・」

「叔母さんも、聖ちゃんのこと、大好きよ」

Kiyomiさんは41歳ですが、
叔母さんにとっていつでも姪っ子。

まっすぐ飛び込んでいくことが、叔母さんにとって嬉しいことなんだな、と素肌で感じる夏です。


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チュースとマルタちゃん

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2010年7月24日 (土)

トマト

今日は

ティティです。

スーパーのレジに並び、
他の買い物客のカゴの中身を観察してみると、
どのカゴにも真っ赤なトマトの姿が見られます。

15世紀、
メキシコやペルーからイタリアに渡ってきたトマトは当時、有毒があると信じられ、観賞用に用いられていました。

それから1世紀後、イタリア人が食材としてトマトを食べ始め、その1世紀後にはヨーロッパに普及し、
アメリカに食材として普及したのは、、1820年です。

今日、サラダ、ピッツァ、トマトソース、グリル、ドライトマトなど、様々な姿で食卓に並ぶトマトたち。

全世界に何百種類と存在する中、トスカーナのスーパーに並ぶのはこんな種類のトマトたちです。

Costoluto(肋骨型)
溝がある形の丸い中型のトマト。
とても味わいがあり、生でも煮ても美味しいです。
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Ciliegino(サクランボ)
丸い小粒の輝きを帯びた赤いトマトは
シチリアなど南で栽培されます。
甘みを帯びているので、このままおツマミに。
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Ramato(小枝)
丸く滑らかなこのトマトは房状に成り、大きさは中型。
果肉が多く、簡単に皮がむけるのが特徴です。
グリルにも最適。
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Cuore di bue(牛の心臓)
その名のとおり、心臓の形をしたトマトは
一つが200~250グラムと大きめのサイズ。
種が少なく、果肉がぎっしりとしています。
シンプルにトマトサラダで頂きます。
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San Marzano
身は固く、水分が少ないのが特徴。
皮を剥いてソース用に使用します。
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さて、皆さんのご近所にはどんな種類のトマトがありますか?

暑い夏は是非、トマトをサッパリ・簡単レシピでお楽しみください。

一例として、ブルスケッタを紹介しましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=C4zVkQIdSaI&feature=related

トーストしたパンにニンニクの欠片をすりこみ、
ガーリックトーストを作ります。

その上に軽く塩をまぶし、
オリーブオイルをまわしかけして召し上がるもよし、

もしくは、角切りトマト、バジルを載せ、
塩とオリーブオイルをかけて召し上がるもよし、

美味しさの決め手は、旬の熟れたトマトと良質のヴァージンオリーブオイルです。

では、Buon appetito !(よいお食事を)

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2010年7月21日 (水)

アレーナ円形劇場

今日は

ティティです。

ここのところ、定休日も仕事に充て続けたkiyomiさん。

そのご褒美として、昨日の休みはオペラを堪能しました。


古代ローマ時代、紀元一世紀からあるヴェローナのアレーナ円形劇場。

夕日が沈みかける頃、オーケストラの誘導で始まるカルメンの舞台。

シックを身にまとった大人たち。

長い時間を経て培われた、大物たちの洗練された時空と共にいられるとは、なんて贅沢なことでしょう!

まだ余韻が残ります。

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2010年7月19日 (月)

幸せの住み家

今日は

ティティです。

アクアボッラには、2階席のほかにも屋外席があります。

この季節は雨でも降らない限り、皆、外でお食事。

入り口に近いテーブルに腰掛け、新聞を広げ、煙草をふかし、そして、両脇のテーブル客との会話を楽しむパトリッツィオ。

「じゃあ、また!」と去っていくお客様に、まるで久しぶりに会った友人と別れるような情を感じます。

この「微かな情」を感じる日々に、とても幸せを感じるのです。

初めてアクアボッラに訪れたローマのお客様とは動物愛護団体の話で盛り上がり、
艶々した小麦色の肌で現れる常連客からはバカンスの話を聞き、
里帰りした若い女医からは家族の絆の話題になり・・・・

競争の激化で、あちらこちらのお店が創意工夫をし
他店との差別化を図るこの時代。

「情の交流」が見事に取り残されてしまっている故に、
消費者は、より新しいもの、よりお得なもの、より珍しいものへと一過性の刺激を追い求め、あちこちに張り巡らされたコミュニケーションの場に身を置いていながらも、心は真の豊かさを得られず、密かに疎外感さえ感じています。

ここ、シエナの田舎にポツンとあるアクアボッラ食堂。

全然有名でもなく、毎日繁盛しているわけでもなく、
儲けも食べていくのがギリギリなほどですが、
どんなに有名で華やいだレストランよりも、この食堂に誇りを抱くkiyomiさん。

かつて、パトリッツィオに対して、
「何て、戦略的な能力に欠けてるのかしら?」
と非難したこともありました。

しかし、同じ規格の高層マンションが立ち並ぶ街に、
風が吹き抜け、虫の声が聞こえる空き地がひっそりと在るように、情の交流があるこの小さな食堂を愛おしく感じるのです。

このことに気づいてから、
今が幸せなんだ、ということを知らされる今日この頃です。

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パトリッツィオと娘のシルビアちゃん(17歳)

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2010年7月16日 (金)

夏はシンプルに 庶民の味

今日は

ティティです。

トスカーナは昨日も、今日も、明日もヒート!

暑い故に、スイカやビール、そして日没後の風が体を通り抜ける一瞬に感激を覚えます。

さて、この暑さの中、冷房もない生活を送るシエナより、庶民のレシピをお届けしましょう!

イタリア料理とは、メディチ家のような貴族から発祥した手の込んだレシピと、貧しい庶民の生活から生まれたシンプルなものがあります。

庶民ゆえに粗食かというと、とんでもない!

恋愛にも、食べることにも、美味しいものを率直に求めるイタリア庶民は、シンプルな方法で、贅沢な旨みを楽しみます。

そんなイタリア的庶民の明るさを、
夏のレシピを通じてお届けしましょう。

お料理経験のない男性も、是非、トライしてください。

イタリア庶民風、シンプルレシピ

ボールやどんぶり、小さな鍋を一つ用意してください。
容器なら何でもよいです。

その中に、角切りのトマト、みじん切りの玉葱とセロリを入れます。

もし、ツナ缶やカマボコ、バジルやシソの葉、オリーブの実などがあったら、それらも食べやすい大きさに切って入れてみましょう。
何でもご自由に。

お次は味付け。
塩、コショウを少々振りかけ、オリーブオイルをまわしかけます。

(ニンニクのすり卸、お醤油を数滴加えると、美味しさアップ!)

これでベースは出来上がりです。

さて、この中に、何をいれましょうか?

すき焼きの残り汁に、ご飯を入れる人と麺を入れる人がいるように、この具の中に、お好きなものを一つ選んで入れてください。

        昨日の晩の冷や飯

        スパゲッティ

        マカロニ

        時間がたって硬くなったパン
(細かくちぎってくださいね)

よく混ぜ合わせて、お皿に盛ったら、いただきま~す!

準備する素材としてイタリア的な素材を表記すると、
普段、イタリア食材が身の回りにない方にとっては
(気さくなもの)という気楽さが生まれないので
あえて省きました。

今回の趣旨は、オリーブオイルや素材の旨みとシンプルに付き合い、健康生活を楽しんでいただくこと。
イタリア庶民の知恵のレシピです。

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2010年7月14日 (水)

おめでとう!ファンチュッリ

今日は

皆様に大変ご好評をいただいておりますオリーブオイルの作り手、ファンチュッリ農園。

1500年から代々と続く農園を守り続ける二人兄弟のエンリコとルイージが、めでたく結婚いたしました!

弟のルイージは7月7日、そして兄のエンリコの挙式は7月10日です。

これからも宜しくお願いいたします。
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2010年7月11日 (日)

フィレンツェをご家庭に

今日は

フィレンツェでシェフを務める友人、ケンちゃんが日本で2日間のみ、料理教室を開きます。

彼が副料理長として腕を振るうレストラン、
ボルゴ・サンヤコポはこちら。

http://www.lungarnohotels.com/en/firenze-hotel-lungarno/bars-restaurants-50

既に、雑誌に何度も取り上げられているので、
ご存知の方もいるかもしれませんね。

総料理長を努めるベアトリーチェ セゴーニ氏はかつて大統領、国賓など政治家の晩餐会の料理を努めるキャリアを持ちますが、実際に現場を仕切るのはケンチャンこと元吉賢一君。

フランス ル・マン24時間レースの専属シェフや、イタリア料理の巨匠ジャンフランコ ヴィッサー二と共にアブルッツォ州ラクイラの被災地にて1000人分のランチを担当するなど、レストラン内外で活躍中です。

そんな彼から一流レストランの技を教わり、
ホームパーティーをグンと盛り上げませんか?

尚、講習会で取り上げられますメインの料理、
「マルケ風魚介のスープ」は、
イタリアスープコンクールで優勝した作品です。

興味のある方、是非、お問合せください。

クッキングコミュニケーション KOIKE(主催)
メール cooking1viola.ocn.ne.jp 
FAX 042-843-5330(担当小池)

【当日のメニュー】

エントラティーナ   
    チーズの温製ケーキ仕立て

アンティパスト      
     干しだらのイカスミクレープ包みアンチョビとクルミのソース
 
プリモ   アンコウのカンネッローニ

セコンド  マルケ風魚介のスープ

ドルチェ  ティラミス  

【会場】

赤堀栄養専門学校 (東京都豊島区目白3-1-31)  
山手線目白駅下車 徒歩3分

【日時】

 8月20日(金) 18:30-20:30
 8月21日(土) 13:00-15:00

【参加費】
 15,000円(税込) (講習会費・料理とワイン試食、レシピ代込み)
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2010年7月 9日 (金)

パウル君

今日は

ティティです。

昨日のブログで、ワールドカップを占うタコの話題に触れました。

母国の敗北を占ったタコのパウル君はドイツ国民から「食べてしまえ!」と怒りを浴びています。

そんな状況下、スペインのサパテーロ首相は、
「秘密警察を送り込んでパウル君を守る」
と宣言したとのこと。

さて、決勝戦ではパウル君の予言どおり、スペインが優勝するのでしょうか?

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2010年7月 8日 (木)

ワールドカップを占うタコ

今日は

ティティです。

kiyomi、ドイツのタコの話、聞いた?」          

「ドイツとタコと、どういう関係があるの?」

「ドイツに、ワールドカップの勝敗を予測するタコがいるんだよ。なにやら、水槽の中に両国の国旗が描かれた箱が置かれ、タコが抱きつくほうが勝ち。今まで、外れたことがないんだって。昨日のスペイン対ドイツ戦も、既に予測済みらしいよ」

冗談のような話ですが、沢山の報道陣がこのタコの占いにシャッターを切ります。

こちらをクリックしてください。

http://www.youtube.com/watch?v=bqHox0o8FGQ

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のどかな夏の光景

今日は

ティティです。

「ロベルト!どう?」

庭先で見かけた彼に声を掛けると、
人差し指を立て、ノーのサイン。

「・・・戻ってくるといいね。猫ちゃん」

レストランの定休日ですが、
大学卒業パーティーの予約が入った火曜日。

ランチを終え、夜の8時にアパートに帰宅しますが、
まだ陽の高い夏の夜に、
ロベルト一家は猫ちゃんを探しています。

「もしもし、パトリッツィア?kiyomiです。
御免なさい、夕飯時に電話しちゃって」

「あら、kiyomi。どうしたの?」

「同じ敷地内に住むロベルトのところの猫ちゃん、
メスのほう。帰ってこないのよ。
猫が運ばれてきたとか、何か聞いてない?」

「あの猫ちゃん、去勢手術したから盛りで家出することはないのよ!」

「窓から、落ちたのよ。翌朝気がついても、姿がないの。で、まだ帰ってこないのよ。
獣医の立場から見て、猫はどうなっちゃってるの?」

「まあ、落ちちゃったの!ショックを受けてヒッソリと隠れてるわ。暗くなって、車の通りがなくなった頃に戻ってくるから、入り口を開けて待ってあげることね」

「いつも、ありがとう」

パトリッツィアの忠告を奥さんのラウラに伝え、
あとは朝を待つのみ。

翌朝、階段を下りると、家具の搬入作業をしているロベルトが仕事の手を休め、kiyomiさんに近づいてきました。

「戻ってきたよ!夜中」

「ワーッ!」

「俺、夜中にミーチャの夢見てさ、
気づいたらミャーミャー窓の下で鳴いてるんだ!」

一見落着

家族全員で猫ちゃんを探したロベルト一家は、
皆で喜びを分かち合います。

そして、アクアボッラでも、
スペッツィアから集まった家族一同が喜びを分かち合います。


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卒業した孫娘さんと踊るおじいちゃんは83

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2010年7月 6日 (火)

早く戻っておいで

今日は

ティティです。

コンコンコンコン・・・コンコンコンコン・・・

「キツツキかしら?」

数ヶ月前、ラウラが庭の大木を指差して、
「ほら、キツツキがいる」と言ったことをぼんやりと思い出しながらベットに横たわっていると、
また、コンコンコンコン・・・コンコンコンコンという音が。

恐る恐る玄関に向うと、
窓ガラスの向こうにジェッシカの姿が見えます。

「うちの猫ちゃん、見なかった?昨日の夜、窓から落ちたみたい。どこにも姿がないの」

大粒の涙を流しながら、kiyomiさんに僅かな期待をこめて尋ねますが、残念ながら、何の情報も返せません。

駐車してある車の下、茂みの中、家具が積み重ねてある隙間などなど、あらゆる場所を探して回りますが、猫ちゃんの姿はありません。

ジェッシカの猫を探しながらも、kiyomiさんは故・桃太郎君を見かけた場所を追っているうちに、桃君を探しているような錯覚にとらわれました。

「ジェッシカ、あなたの気持ち、よく分かるわ。唯一の救いは、路上にもゴミ捨て場にも姿が無いってこと」

猫を飼った人なら、一度や二度、脱走された経験をお持ちのことでしょう。

「夜、思いっきり遊んじゃったから、今は眠っているのよ。誰にも邪魔されないところで」

1時間後、kiyomiさんはアパートに戻り窓に面したパソコンに向かいますが、
窓の下で、弟のガブリエーレ、お父さんのロベルト、そしてラウラが何度も同じ場所を覗きながら敷地を歩く姿が見え、こちらまで気持ちが沈んでしまいます。

たまりません。

4月、ブルネロの作り手、エリアの叔父さんがアクアボッラに訪れた時のこと。

「エリアのところのロッコは甘えん坊よね!」
と愛犬の話題に触れると、
「難しいんだよ・・・」と予想外の答え。

子犬の頃、車の下に挟まり、胴体が曲がってしまったロッコは、人を見ると、尻尾を千切れんばかりに振り、歓迎してくれます。

「あいつは、もう数日間、立てないんだ。弱ってきている。もしかしたら、手段をとるかも」

「手段って、何?もしかして、殺しちゃうってことなの?」

叔父さんが帰った後、エリアへの連絡を試みますが、
彼は応答しません。

翌朝、エリアに電話が繋がるや否や、
今まで募った焦りから
「ロッコを、殺そうとしてるの?」と口走ってしまいました。

「殺す?馬鹿言わないでくれ。俺はあらゆる手段を尽くしているんだ。お金も時間も、全て、ロッコのために費やしてるんだ。唯一の絶望は、もう他に手段がない、と分からされること・・・」

そう言いかけると、電話を切る彼。

あの逞しいエリアが電話口の向こうで泣いているのが分かりました。

その後、この件には触れられずにいたのですが、ある日、彼と連絡を取らなければならないことがあり、
「そういえば、ロッコ、どう?」
と尋ねてみたところ、
「手術をして、元気が回復したよ!もう大丈夫だ」との朗報!

「今日は、いい知らせがあるの!ロッコは元気です!」

アクアボッラで宣言すると、パトリッツィオもダリオ君も大喜び。

次は、ジェッシカ、ラウラ、ロベルト、ガブリエーレの喜ぶ顔が見たい。

早く、帰ってきて頂戴、猫ちゃん。

道路を渡る際、車には気をつけるのよ。

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2010年7月 4日 (日)

近況アルバム

今日は

ティティです。

最近の様子を写真で御伝えしますね

夕日が大好きなティティ

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出張先、南イタリアの上空から

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ピサ空港に向う前、ちょっと斜塔を観光

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ベルギー人カップル、サルヴィとオディとサンジミニャーノの町へ散策。
この日、バールで飲んだ白ワイン(ベルナッチャ)は、最高にBuono !
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週末婚

今日は

ティティです。

「今読んでいる日本の小説、ちょっと陰険なのよ」

kiyomiさんはパトリッツィオに不満を漏らします。

小説には、容姿端麗、頭脳明晰な姉と
地味で何のとりえもない妹が登場します。

社会人になると、二人の立場は逆転し、日陰的存在の妹が仕事の成功を通じて世の中から脚光を浴び、
本来、したたかに男遊びを繰り返した姉は結婚生活と妹の出世に不満を抱く、という話。

「その時、私は姉に勝ったと思った」とか、
「私は負けた、と思った」という表現が多く、
勝負をかけるために見栄を張る心理的な描写ばかり。

結婚することによってアイデンティティが失われ、刺激が薄らぐ凡庸な夫婦生活を避けるため、妹は週末だけ旦那と暮らす、という提案を立て、それを実行し、そして離婚に至ります。

(まるで、嫌いな玉ねぎをお皿の端に寄せて
美味しいところだけをつついて食べる子供の食べ方みたいな人生ね)

理論的には納得いかない話の筋ですが、実際、kiyiomiさんの周りを見渡してみると、10年以上、恋人の関係を維持しながら生き生きしている友達が結構いるのです。

平日はプライベートな生活を守りつつ、休日は一緒に過ごす。

10年以上の付き合いゆえに、お互いの家族も知り合い、困ったときには助け合うプチ夫婦のような彼ら。

ランチ時、大きなリュックをしょった物売りのアフリカ人がアクアボッラにやってきました。

「悪いけど、この前はライターをまとめて買ったし、猫柄のカーペットも買ったでしょ、今日は何も買うもの無いわよ」とkiyomiさんがピシッと一言述べ、パニーノを手渡します。

「ここイタリアで生活をするって、決めたの?」kiyomiさん。

「とんでもない。ナイジェリアに帰って結婚するんだ。
そのための資金稼ぎさ。第一、イタリアは遅れている。

皆、英語をしゃべれない!」

すると、ピーノが横から口を出します。

「結婚するために稼ぐなんて、古いぞ!俺らなんか、慰謝料払うために働いてるんだ。先を入ってるだろ!」

イタリアの法律では、浮気や暴力、妻を見放すようなことが原因で離婚に至る場合、男性は元妻の生活を一生保護し続けるため、送金し続ける義務があります。

中には、結婚してまもなく、夫の欠点を洗い出し、慰謝料で気ままな生活を送る女性も少なくありません。

精神の自由を求めるイタリア人、そんな優柔な意見にカッカする真面目なナイジェリア人、どっちの意見も分かる中立的なkiyomiさん。

40度近く温度が上昇してますが、アクアボッラの屋外席では、会話が渇くことはありません。

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2010年7月 1日 (木)

3つのアイ

今日は

ティティです。

「オーッ、元気?」

入り口で湧くダリオ君の歓声に続き、
「オー!久しぶりだな~」というパトリッツィオの大きな声。

「キヨミもおいでよ~」

興奮気味のダリオ君に急かされ入り口に向うと、そこにはあの日のままの3人(二人と一匹)がニッコリと並んでいます。

「ワ~!シューミー!」

ベルギー人のカップル、サルヴィーとオディー。
そして彼らの子供、マルチーズのシューミー君。

泣けて泣けてたまらなかった夏から2年が経ち、
またアクアボッラに訪れてくれました。

2週間のバカンスのうち、レストランの定休日以外はランチとディナーの2度、アクアボッラに自転車でやってきた彼ら。

(この雨じゃ来ないだろう・・・)という悪天候であっても、彼らは雨合羽を羽織ってやってきました。

「シューミーだ~!」

遠くに現れる2台の自転車姿に誰かしらが声を上げ、kiyomiさんはブルスケッタ用のトーストを準備する。そして、シューミー用のお肉をお皿に盛り、彼らをお出迎え。

こんな生活パターンに慣れると同時に、
(彼らはバカンスなんだ)
という別れの日への意識も強まり、嬉しさと哀しさが同居するのです。

「2年前、女どもは大泣きしてたもんな~」
とパトリッツィオ。

「そう。彼女はその後、ベルギーに戻ってからも1週間泣いて暮らしていたよ」

日に焼けたサルヴィーはお兄さんのような大らかさでオディーに目を注ぎます。

また彼らと2週間の生活が始まります。

サルヴィーの家系はイタリア移民ということもあり、イタリア語の会話ができるのですが、オディーはフランス語とほんの僅かな英単語のみ。

しかし、kiyomiさんは彼女の繊細さ、優しさが大好き。

言葉の壁をこれほど惜しく感じたことはありません。

「決めたわ!今日からフランス語を勉強する!」

テーブルでそう宣言するkiyomiさんに、
「おいおい、まずはイタリア語をマスターしてくれよ!」
とパトリッツィオ。

彼のこういった突っ込みは、アクアボッラの調味料です。

(また、2週間後に大泣きかしら?)

いいえ、そうは成りません。

彼らがトスカーナを去ることを終わり、と考えるから哀しいのです。

「終わり」を「始まり」に変えればいいだけのこと。

彼らが去った後、フランス語を勉強して、メールをだしましょう!

アクアボッラの季節の写真を添えて。

生きるヒントは、いつも「会・愛・哀」に隠されています。

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