我がトスカーナ
今日は
ティティです。
「ボナセーラ」
2組のイタリア人家族グループが訪れました。
「ボナセーラ、どちらの人?」
「フィレンツェだよ」
同じトスカーナ圏内、同郷の気持ちで歓迎しながらも、隣町には劣りたくない、という自負心も芽生える微妙な関係です。
彼らが肉料理を平らげた頃、ダリオ君が厨房に現れました。
「僕達、kiyomiの話題にも触れたんだ。
ちょっと顔出してきてよ」
「了解・・・」
照れ隠しに、大きめな声をあげてお客様のテーブルに登場します。
「お味のほうはいかがでしたか?」
「美味しかった!トリッパ、最高だね」
フィオレンティーナの舌に適って一安心。
がっちりとした体格の男性に向って、
kiyomiさんは問いかけます。
「あなたは、シェフですか?」
「いや、運送関係です」
「どの地域を運転しているんですか?」
彼の体型から、トラック野郎を連想したダリオ君は、
人懐っこく尋ねます。
「管理職だよ。
プラダやグッチなど、ファッション関係専門の輸出を手がけているんだ。
だから日本のお客様も沢山いるよ。
先週、大事な取引先のS氏が我が社に訪れてね、日本から事務所にかかってきた電話をS氏につなぐと、彼はピーンと規律して受話器を片手に持ったまま
(ハイッ、ハイッ)とお辞儀してるんだ。
電話回線で1万キロ離れた相手に向ってだよ!
日本人の礼は徹底しているぞ」
日本人が挨拶の際にお辞儀をすることは知っていても、実際、その現場を目の当たりにするイタリア人は、
その頻度に驚きます。
先日、日本旅行を楽しんだミケーレとアリアンナもこの件に触れていました。
「私達ね、飛行場でお辞儀する人を眺めながら何回お辞儀するか数えてみたのよ。1回、2回、3回・・・・
結局12回、頭下げてた」
日本を訪れたことがあるイタリア人の定番話題ベスト3は、
公共施設、特に公共トイレが徹底してきれいなこと
交通機関が1秒の狂いもなく発着・到着すること
仕草が丁寧で、相手に対して礼があること
「翌日の朝、S氏の待つホテルに10分遅れて到着したんだ。渋滞とか何とかで、そんなの当然だろ?
その日の仕事を終えるとS氏から、
(夕食を一緒にいかがですか?)と誘いがかかった。
一度家に戻り、シャワーを浴びてS氏のホテルに定刻どおり到着したんだ。
すると30秒遅れて彼の部下がロビーに現れた。
S氏は腕時計に目を落とすと、部下に軽い拳骨をくらわせたんだよ。それを見て、青ざめたね。
(今朝、俺は10分も遅れてしまった・・・・)って」
「張り倒しに相当する失礼だな」
とパトリッツィオが楽しそうに口を挟みます。
彼の話に刺激され、隣に座る友人も時間にまつわる体験談を語ります。
「僕なんて、この前仕事でシチリアに行ったけど、すごいよ、シチリア人。電車の到着が1時間遅れたから駅員に抗議したら、(1時間くらいどうってことない。このまま4時間も到着しないようだったら本部に連絡を入れやる)ときたよ。仕事の移動では、頭にきっぱなしだったよ!」
その後、彼らが出張で訪れた国々を巡回し、トスカーナに話題が戻りました。
「色々な国を知れば知るほど、トスカーナの景観に惚れ直すんだよ」
「俺もトスカーナ人であることを誇りに思う」
「そうそう。北イタリアの奴らみたいにエコノミックに染まらず、また南イタリアのようにマフィアと宗教の支配も受けず、トスカーナの生活こそが人間的だよな」
「そうそう。世界で最初に死刑廃止の規定を定めたのもトスカーナ大国だ」
「そうそう。その昔メディチ家はイギリス王室に莫大な融資したほどの盛況ぶりだった」
そうそう!
そうそう!
トスカーナの同士は自国の自慢話をつまみに夜更けまでワインを楽しみます。
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