夏と田舎
今日は
ティティです。
シエナから車を南に走らせること2時間半。
ティレニア海から4キロほど離れたアルビニアという小さな町で、アリアンナの家族は酪農とアグリトゥリズモを経営します。
先日の定休日、kiyomiさんはフィレンツェのコック仲間を誘い、150頭の牛、馬、そして犬や猫など動物達と生活を共にする彼女の実家を訪ねました。
「日本人シェフを御もてなしするの初めて!緊張しちゃうわね。私の料理、口に合えばいいけど・・・」
少々照れながらもアリアンナは料理をテーブルに運びます。
前菜はお父さんロベルトの手作りチーズ。
「やっぱり違う!」
フィレンツェのレストランでドルチェを担当するAさんは
大きな声で叫ぶと、続けてモッツァレラを口に運び、
正面に座るkiyomiさんの目の奥を見つめながら
「やっぱり、違う」と言いたげにモクモクと口を動かします。
流通網が目まぐるしく発達した今日。
現在、イタリアで使用されている50%以上の牛乳はドイツなどから運ばれてくるとのこと。
イタリアで酪農を営むには費用がかかる一方、
搾乳の量が少なく、海外からの輸入に頼っているという事実を初めて知らされました。
グローバル化に伴い、遠く離れた土地を生活にまとい、地元のものは日常生活から遠ざかっていく、そんな矛盾を感じることに慣れつつある故に、20メートル離れた牛小屋で絞られるミルクから出来たチーズに感動します。
「バジルソースも私達が作ったの。松の実もバジルも庭で採れたもの。パスタも手打ち麺よ!
今朝の産みたて卵でね!」
2種類のパスタに続き、魚や肉料理を平らげ、パンパンなお腹をさすっていると、お次は自家製のリキュールです。
「これは妻が大好きなオレンジのリキュール。
そのほか、苔桃だろ、レモンだろ・・・・」
ロベルトは嬉しそうに瓶を棚から取り出してはテーブルに並べます。
勿論、デザートも自家製。フルーツポンチには、叔母さんの農園から摘んだイチゴがふんだんに使われていました。
「なんて味のある時間なんだろう!」
昔、小学生の頃、夏休みに訪れた田舎を思い出しました。
お爺ちゃんが畑からもいでくれた不揃いな歯並びのプリプリとしたトウモロコシ。
お婆ちゃんと一緒に摘んだミョウガのお味噌汁。
「お米には神様が沢山住んでいるから、一粒もこぼしちゃいけないよ」
背中の曲がった小さなお婆ちゃんは、丁寧にお米を研ぎながら教えてくれました。
20代の頃には、年齢に不相応な高いレストランに行った記憶もありますが、何を食べたのかよく思い出せません。ただ、自分が映画のワンシーンの登場人物のように思えたという非日常シーンが遊園地のアトラクションに似た高揚感を与えてくれたことは覚えています。
それにしても、夏の田舎で味わった食材の味は何故、年を重ねるたびに色濃く蘇るのでしょう。
また夏が始まります。
将来まで余韻が続くような、美味しさとの出会いが楽しみです!
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