マイペース
今日は
ティティです。
「ゴメン、ゴメン~。ボスがなかなか帰してくれなくって遅くなったわ」
夕方遅くに、アリアンナがようやく姿を現しました。
「kiyomi、時間ある?私の家にいかない?
アラブのお茶があるのよ」
「ん~、残念!1時間後にはアグリトゥリズモのお客さんが食べに来るのよ。ここでお茶しましょ!」
外のテーブルに腰掛、
「ウエイターさ~ん!」と婦人気取りで声を張り上げると
パトリッツィオが、「はい、マダム。何でございましょう」と一流ホテルのウエイターを装い、二人を笑わせます。
「何か、冷たいものあるかしら?」
「氷で宜しいでしょうか?」
「ノー、ノー!」
パトリッツィオが運んでくれたピーチティーを口に含むと、せっかちな仕事モードがオフに切り替わりアリアンナはホット一息つきます。
「シエナって何もないじゃない?
友達がいないと退屈で生きていけないわ」
「あら、そう? 私、このシエナが肌に合っているような気がしているのよ。
ピアノ曲で例えるとね、単純な曲でも、充分に譜面の読み応えがあるの。
(この曲は、作曲家がどのような心境で書いたのかしら?)ってその時代背景や彼の生い立ちを調べてみたり、沢山のピアニストの演奏を聴き比べながら、私だったらどう構成しうようかな?って研究してみたりね。全身こめて弾くと聴き手の心に触れて、曲が生きるのよ」
「kiyomiは掘り下げていくタイプね。
そのうち、シエナに根が生えるわよ!」
「今は、好奇心旺盛に動き回る人の話しを聞くのが楽しいわ。ちょっと前まではね、特に、イタリアで生活する日本人の活躍ぶりなんかを知れば知るほど、(私って、シエナでジッとしちゃって、なんて動かないタイプなんだろ、怠けもの!)って後ろめたさを感じてしまい、苦手だったのよ。でも、今では誇りをもって言えるの。
(私は動かないタイプだ!)って」
学生時代、50分単位で切り替わる学校の授業になかなかついていけませんでした。
社会人になると、会社から出される課題にどう取り組んでよいのか呑み込めずオロオロしては同期から出遅れていました。
イタリアに留学した1~2年は、イタリア人の前に立つと気が動転してしまい会話どころではありませんでした。緊張のあまり貧血で倒れることが続き、入院検査をしたほどです。
同期の仲間に比べると遅れをとっている自分に劣等感を抱いていたのですが、
(自分は新しい物事を受け入れるのに、時間がかかる体質なのだ)という結論に達し、自分流の生き方に自信をもてるようになったのは、最近のことです。
シンプルなピアノ曲を披露するのと同様に、身の回りのさり気無い出来事でも、自分の言葉で表現できたら、それは素晴らしいことです。
そのためには、指の鍛錬曲を繰り返し練習したように、
単語や熟語の勉強を続け、イタリアの歴史や文化を知り、イタリア人の心境を観察してみる。
掘り下げることが沢山あるのです。
もし日本で暮らし続けていたら
旬な話題、新生活スタイルに足並み揃えられない自分に劣等感を抱き、口先では他人を批判しながらも後ろめたく生きていたかも知れません。
自分を認める心境に達するにも時間がかかりましたが、
Chi va piano,va sano e va lontano
(ゆっくり行くものは安全に遠くまで行く)
これが私です!
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