いってらっしゃーい
今日は
ティティです。
アリアンナとミケーレは、今晩ミラノから成田へ発ちます。
「飛行機、ちゃんと飛ぶの?日本はGWで特殊なのよ!」
「大丈夫よ、kiyomi。そんなに心配しなくても」
おっとり型のアリアンナ。
「でもね、こんなシエナの田舎から東京に着いたら驚くわよ!それにあなた達の計画、いくらJR乗り放題パスがあるからといっても、無謀よ!日光の翌日は、箱根、その翌日は高山・・・」
姑のように気を揉むkiomiさんは、彼らの旅程に合わせた時刻表を作成しながら不安を解消します。
限られた時間で、できるだけ多くの観光名所を網羅しようと走り回る日本人観光客。時にその様子はイタリア人に特殊に映りますが、彼らのプランはそれを上回ります。
嬉しいことに、東京のS子さん、岡山のT子さんが彼らを案内してくれることになり、出発前から二人は大はしゃぎ。
20代の頃、kiyomiさんはよく一人で旅行をしました。
ロンドンのロイヤルオペラ劇場でオペラを鑑賞した時のこと。
休憩時間に表に出てボーっとしていると、劇場の隣にあるインドレストランのウエイターがガラス越しに手招きをします。
周りを見渡し、(やっぱり私に?)と恐る恐る店に近づくと、
「オペラが終わったら、食べにおいで!」との誘い。
オペラの余韻と共に特別な気持ちでレストランに入店すると、花が添えられたこれもまた特別な席に案内され、料理がカートに乗って運ばれてきました。
「君が一人で寂しそうに立っていたから、招待しよう、ということに決めたんだよ」とインド人のウエイター。
お腹と気持ちが満たされます。
「ちょっと待っててね。送っていくからね」
今考ると相当なリスキーな行動ですが、彼に送られアパートに辿り着くと、紳士(真摯)な彼はkiyomiさんを配慮して、握手もヨーロッパ式挨拶のキスもせず去っていきました。
ナポリの湾岸での夕食。
(なんて美味しいんだろう!)
何を注文してよいのか分からないkiyomiさんにウエイターは熱心にメニューを説明してくれ、出された料理に舌鼓。料理の味を引き立てたのは、七変化する夕焼けの色でもなく、ギターの演奏でもなく、ウエイターのサービスです。
また、ヴェローナの野外音楽劇場で転んでしまった時は、周囲のイタリア人数人がさっと駆け寄り「シニョリーナ、怪我は無いですか?」と手を差し伸べてくれました。
書き出したらきりが無い旅の思い出の数々。
そこには、「現地の人に気遣ってもらった」という感謝と感動があります。
これから成田に到着するアリアンナとミケーレ。
S子さんとT子さんの御もてなし、道案内をしてくれる通行人、旅館の女将さんなどと触れ合いながら、日本旅行がスペシャルなものに色づいていくことでしょう。
イタリアには毎年沢山の日本人観光客が訪れます。
日本企業が主宰するツアーも充実し、日本人スタッフのそつが無いガイドに引率し、観光地巡りができます。
しかし、名所を訪れたという証拠写真が増えていく一方、旅の醍醐味である、(現地の人と触れる)チャンスが入り込む余地が薄いのが残念です。
(何、このプラン!)と閉口してしまった彼らの日本旅行。
「分からなかったら、聞けばいいのよ!」
あっけらかんに答えるアリアンナを見ていると、
(そっか!)とこちらの肩の荷もおりる今日この頃。
いってらっしゃーい!
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