走るヴィニタリー
今日は
ティティです。
ワインの生産量世界一のイタリア。
そのイタリアで一番大きな規模の試飲会がヴィニタリーです。
沢山の人が溢れる会場に到着すると、その日、寝不足の状態だったこともパッと忘れてしまいます。
商談先のブースで次々とワインの試飲が進む中、
同席していたワイナリーのF社長が突然音を立てて席を離れ、他のスタッフも社長に続き走り出しました。
異様な雰囲気の中、誰かのカバンが盗まれたことを察し、
「ドロボー、ドロボー、帽子の男を捕まえてー!」
とkiyomiさんも大声で叫びながら会場を走ります。
人だかりの輪の中で響き渡るF社長の怒鳴り声から、犯人が捕らえたことを確認し、テーブル席に戻りました。
すると、kiyomiさんの隣に座る中国人女性が呆然とした様子で佇んでいます。
「彼女のカバンだったのね」
犯人の男は、黒いジャケットを片手にブースに入り、椅子の背もたれにかけてあったカバンをジャケットで覆い隠すように持ち去ろうとしたところを、F社長に目撃されたのです。
その後男はF社長を押しのけ猛ダッシュ。
ワイナリーの男性スタッフもF社長に続き、男は会場の出口で捉えられました。
汗ビッショリになってテーブル席に戻るF社長。
カバンを彼女に手渡すと、ハッ、ハッ、と息切れした声で「すみません、でしたッ。心配を、おかけしましたッ」と述べ、他のテーブル席のお客様たちにもお詫びを述べます。
そんな社長に、「ブラヴォー、ブラヴォー」と拍手喝采。
数分後には、このワイナリーが位置するプーリア州の最高責任者が現れ、
「皆さん、大変ご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません。このようなことが起きて、プーリアをどうぞ、嫌いにならないでください。私達も毎日、このようなことと戦っているのです。幸い、私達の州には、彼らのような優秀な作り手が素晴らしいワインを生産しています。彼らのお陰をもって、私達はプーリア州に誇りをもてます」とお詫びを述べました。
「F社長、実はボクシングをやっているらしくて、男は滅多打ちにされたみたいですよ」とインポータの社長に耳打ちすると、中国人である彼は、「貧しさから犯してしまったことなのに。残念だ・・・」と複雑な表情を浮かべます。
その後、状況説明のためF社長と中国人女性と館内のポリスルームへ。
「貧しくて腹が減っているのなら与えてやる。しかし人のカバンを盗む行為は絶対に許さん」
F社長はまだ怒りと興奮が治まりません。
ポリスルームには、犯人の男が手錠をかけられ下を向いたまま壁際に立たされていました。
男はペルー人。
アクアボッラでパーティを主催するペルー人と親交を持っていただけに、残念です。
2人の警察官に連行される男に、
思わず「良き人生を」と声を投げかけました。
被害者の彼女のカバンには、パスポート、身分証明書、クレジットカード、携帯電話など、貴重品全てが揃っており、これを盗まれていたら大変なことになっていたでしょう。
翌日、このワイナリーの他のスタッフと話しをしていて知ったのですが、
逃げる犯人に追いつき、男を押さえ込んだのは若手スタッフのA氏。
頭の切れる彼は、いつも笑顔を絶やさない美形のイタリア人ですが、まさかその彼が柔道の黒帯の持ち主などとは想像もつきませんでした。
公の席では自分の手柄を一切口にせず、いつもの笑顔で、「皆さん、乾杯しましょう!」と場を盛り上げます。
この人達、カッコいいな、と思いました。
そして、熱くスマートなこのチームと仕事が出きることを、とても誇りに思いました。
お財布の厚さに惹かれやすいこのご時勢。
しかし、汗とハートの熱さには敵いません!
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