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2009年7月21日 (火)

ブルネロ スキャンダル

055 皆さん、お元気ですか? バッカスです。

このブログで皆様に御伝えするワインのニュース等は、購買をあおるものではございません。

「こんなことを掲載したら、販売に影響するのではないか?」ということも含め、周辺で起こる出来事をそのまま御伝えしていきます。

皆様がワインとダイレクトに向き合い、今後、ワインとのお付き合いをより深めていただければ幸いです。

さて、今回はブルネロスキャンダルについてご報告。

7月19日(日)の新聞La Repubblia紙に掲載された内容をご紹介いたしますが、その前に、記載内容を把握していただくため、周辺情報を簡単にご説明いたします。

ブルネロ ディ モンタルチーノとは、イタリアを代表する高級赤ワイン。
生産量の60%は海外に輸出され、その内訳は、アメリカが25%、続いてドイツが9%、スイス7%・・・日本はイギリス同様に3%です。

この統計からもお分かりのように、アメリカのマーケットは非常に重要で、大手ブルネロの生産者ほどアメリカへのプロモーションに力を入れます。

アメリカには、ワイン愛好家に支持される雑誌「ワインスペクテイター」というものがあり、毎年春にはブルネロ特集が掲載され、それぞれの作り手のワインに点数とコメントがつけられます。

Kiyomiさんは今では、アクアボッラでコックをしてますが、以前はシエナの城壁内にあるエノテカで働いておりました。

2002年、20世紀最大の豊作年と称えられたブルネロ‘97が長い熟成期間を経て販売開始となりました。

ワインスペクテイターを手にしたアメリカ人で賑わう店内。アメリカ人が捜し求めるのは、この雑誌でより高得点をとったスーパー級のブルネロ‘97です。

その紙面をよく見てみると、ブルネロの創始者であるビオンディサンティに低い得点が付けられ、しかも「Drink now 今すぐ飲むワイン」と表記されていました。

その昔、カジュアルな食卓ワイン「キャンティ」 の発祥地としてトスカーナは世界に知られていましたが、ビオンディサンティが1888年にブルネロを生み出すことにより、高級ワインの発祥地としてトスカーナワインのポテンシャルが高まります。

現在、ビオンディサンティは5代目のフランコ氏が蔵を守ります。
今でも、伝統的なスタイルを守り、緻密にワインと向き合います。

Kiyomiさんは、36歳の誕生日を迎えた時、誕生年のビオンディサンティのブルネロ’69を開けて、皆に振舞いました。

「1969年、ヴィンテージチャートでは、2つ星の不作年だけど、人間の出来は5つ星です!」 とkiyomiさん。

36年を経たブルネロのコルクを慎重に抜き、コルク臭をチェック。無事を確認し、安堵に包まれゆっくりとデキャンタージュする瞬間はとても感動的です。

今では、コンピュータの進歩と共に醸造技術も発達し、ワインの知識が全くない人でも、コンピュータを投入することで、ある程度、もしくは素晴らしいワインが造れる時代となりましたが、69年はまだまだ職人の勘に頼って作られた、そんな時代のブルネロです。

いい葡萄のみを選び、樽の清浄を徹底し、それぞれの行程に慎重に向き合って作られた作品は、36年の月日を経て深い感動を与えてくれました。

さて、脱線いたしましたが、話題をブルネロスキャンダルに戻しましょう。

ブルネロ協会には200程の生産者が加盟してますが、ほんの僅かな大手だけで、ブルネロの生産量の半分を占めております。

彼ら大手が生産するブルネロは、何としてでもアメリカ人の需要を得なけれはなりません。

ブルネロの定義として、葡萄品種サンジョヴェーゼを100%使用することが義務付けられてますが、各社挙って特別化を狙い、アメリカ人ウケするテイストに仕上げようと、違う葡萄品種を若干混合した、という疑惑が昨年浮上しました。

ようやく、この問題に関する調査が終了したところです。

パトリッツィオとkiyomiさんは、新聞に掲載された記事についてコメントを交わします。

「より美味しく、柔らかく、飲みやすくしようと研究を重ねて考案した結果、法を外れて他の葡萄品種を混ぜた、という違反。結局、このワインは高品質なワインとも言えるんだよな~」とパトリッツィオ。

「ん~、ワインを作る過程を短縮して安易に仕上げようとか、似たものを簡単に生み出すために体に有害なものを混合したとか、そういうことではないのよね。でも、ワインは夢を与えてくれるじゃない。ワインを通じて郷土をアピールするには、その土地に昔から伝わる葡萄品種に拘り、郷土の味を守り続ける。協会の管理のもと、規定を設けて伝統が守られるけど、この枠がなくなってしまったら、ワインもコカコーラに近づいていくんじゃないの?」 とkiyomiさん。

実際、モンタルチーノのブルネロの作り手は、家族経営の農家が多く、サンジョヴェーゼ品種のみを手がけている、というところが殆どです。

英語も話せず、ファックスもうまく機能しないような状況のもと、彼らのワインをプロモーションする術を知りませんが、コツコツ畑に働きかけ、彼らなりに精一杯のブルネロを生み出す努力を惜しみません。

今回のスキャンダルをもって、沢山の正直農家のブルネロまでが打撃を受けました。

しかしその反面、小さな作り手のブルネロが売れる背景には、大手作り手のマーケティングとプロモーションによる、ブルネロ全体の活性化があることも確かです。

さて、故人筑紫哲也さんが、著書「スローライフ」の中で、このようなことを書かれてました。

人が通常ものを語る場合は、これこれ、しかじかの理由があって結論はこうだと言うのだが、新聞記事の場合は、先ず結論はこうだ、なぜなら理由はこれこれ、と逆転させて書かねばならない。
この冒頭の部分は新聞では(リード)と呼ばれている。
テレビの世界に足を踏み入れてみたら、テレビで伝えるニュースの実に多くが、(リード)の部分だけで終わってしまうことに気付いた。
そこは「秒」 の世界であり、しばしば舌足らずに結論だけを述べるに終わる。

以下、ブルネロスキャンダルについての記事の翻訳を掲載いたします。皆様は、どのような感想をお持ちになりますか?

ワインを片手に、時にはこのような話題ともお付き合いいただければと思います。

7月19日(日) 新聞La Repubblia紙より

130万リットルのブルネロ、格下げ

ブルネロ ディ モンタルチーノ DOCG(統制保証原産地呼称)からIGT(地理表示つきワイン=生産地が限定されるワイン)へ格下げ。
シエナ税務管理局の調査を経て、わが国のシンボルの一つであるワインのうち、130万リットルに当たる量が、この度終結を迎えた。
検察庁の調べによると、2003年から2007年にかけて、7社の作り手が規定に反し、サンジョヴェーゼ以外の葡萄品種であるカベルネ ソーヴィニヨンやメルローなどを混合していたもよう。
より柔らかい口当たりの美味しいブルネロを目的として行われたとされるこの不正行為、疑惑の持たれた7社が生産するブルネロは、ブルネロ総生産量の半分にあたるとされる。
その生産社は、以下の5社(インポータの方の営業妨害となりませぬよう、名前は控えさせていただきます)。
B社とC社には潔白の結論が下された。

捜査の対象となったのは、7社それぞれの代表、ブルネロ協会の局長ステファノ カンパテッリ氏、そして証明書発行委員会の二人の検査官などなど、17のケース。
8つのケースが折衝となり、9つのケースは、更なる捜査の勧告を受けた。

「私は落ち着いています」とカンパテッリ氏。
「ブルネロのコントロールは常に政府の是認のもと協会の条約規定に沿って行われてきましたから」

調査はまたロッソ ディ モンタルチーノまで及び、50万リットルに当たる量が、IGT及び、キャンティDOCGの格下げとなった。

ブルネロ協会の会長パトリッツィオ チェンチョーニ氏いわく、
「不確かな状況下において、生産者全てに問題が降り注ぎましたが、この調査の終結により、ひとまず不安が解消されました。
今後、司法官の決定を待ちたく思います。
ブルネロもロッソも、既にマーケットに流れているワインに関しましては規定に基づきコントロールを受けたものです」

(注)
格下げという表現を使用しておりますが、
ワインが劣っている、ということではございません。
生産過程において規制が緩いカテゴリーに属することになった、ということであり、自由な発想とオリジナリティあるワインとも言えます。

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